○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
いわゆる種子法は、ほとんどの国民にとってなじみのない法律であり、かつ、誰にも関係のある極めて身近な法律であります。食料主権の根源であり、私たちが日常、地元産の農産物に誇りを持ち、その恵みをいただいているわけですが、開発に至るさまざまな道のりがあり、それを支えていたのが種子法であったと思います。
きょう、私、十二年ぶりに農林水産委員会に出席、質問をさせていただいておりますけれども、この種子法を復活させる法案をまとめられた提出者の皆さんに心から敬意を表するとともに、また、審議の機会をいただいた与党委員の皆さんにも感謝を申し上げたいと思います。
早速質問いたしますが、先ほど緑川委員の方から同じ趣旨の質問があったと思いますけれども、今の私の趣旨を踏まえて改めて伺いたいんですが、附則の第三条に、国内の民間事業者の能力も活用した優良な種子の安定的な生産及び普及に配慮する旨を規定されました。この意味をお答えいただきたいと思います。
○田村(貴)議員 お答えいたします。
種子の供給は、国の基本食料、基幹作物の生産に極めて重要であり、高橋議員御指摘のように、食料主権の根源であると認識しております。
お尋ねの附則第三条の規定、配慮の相手方を国内の民間業者に限定する理由についてでありますが、近年の種子市場の動向を見ますと、その生産、流通、販売までが一握りのグローバル種子会社の手に集中し、多国籍企業上位七社で六九・三%を占めるという状況になっております。
このようなもと、海外事業者の国内参入を認めることはグローバル種子会社をもうけさせるだけで、その結果、種子や農作物価格の高騰、在来の多様な種資源の消失、消費者の選択の幅の縮小等の弊害を招きかねません。
そこで、本法案では、配慮の相手方について、国内の民間事業者に限定したところでございます。
○高橋(千)委員 今、海外事業者の参入の問題、指摘をされたと思いますが、まさに最初に私が言ったように、気づいてからでは遅いのではないかということで、本当に大事な指摘なのかなと思っております。
私は青森県の出身でありますが、まさかり型の下北半島から南、岩手そして宮城へと、やませと呼ばれる冷たい風の吹く太平洋側は、稲作に適さない地域とも言われておりました。冷害、日照不足などを何度も経験し、各県は冷害に強い品種の改良に努力を重ねてきたと承知をしています。昭和の初めまでは鳥さえ見向きもしない鳥またぎと言われた新潟の米も、改良を重ね、今やコシヒカリというブランド米を生み出し、作付面積全国一位となっております。
種子法が十分に機能を発揮し、食と農を守ってきた、このような事例をぜひ紹介してほしいと思います。
○田村(貴)議員 種子法に基づいて、各都道府県と、そして農業試験場は、地域の条件に適合した米や麦の品種育成、奨励品種の普及に重要な役割を果たしてまいりました。
宮城県鳴子温泉地域のお米、ゆきむすびを紹介させていただきたいと思います。
この地域は、高齢化と過疎化に加え、山間豪雪地域という厳しい気候条件等によって、耕作放棄地が増加し、景観も荒廃するという危機に直面しておりました。二〇〇六年に、農家、観光関係者、加工、直販所グループなどが鳴子の米プロジェクトをスタートさせ、耐冷性が高く食味にもすぐれたゆきむすびを品種登録いたしました。食と農を守り、地域の活性化に結びつけてまいりました。ゆきむすびの栽培は、気象条件で五十ヘクタールほどにすぎませんが、適地が限られた品種の開発を行いながら、原原種を維持し、必要に応じて生産、配布するという種子法の枠組みの中で支えてきたものであります。
佐賀県のさがびよりというのもあります。米の粒が成長する時期に高温が続いても、それに負けずに高い収量と高品質な食味が維持され、台風にも強い銘柄であります。県農業試験場が佐賀独自の品種をと十年かけて開発してきたというふうに承知をしております。
○高橋(千)委員 まずは、ゆきむすびの紹介をいただいて、ありがとうございます。
観光ホテルのおかみさんたちが通常より高い値段であえて生産者の皆さんから買い取る、生産者の経営を支えながら、それがブランドとなり、地域の経済を支える役割を果たしています。私もお邪魔をして、試食というか、普通に御飯を食べたことがありますが、夢のようにおいしいのがゆきむすびでございます。
また、今、佐賀のさがびよりの紹介もいただきましたけれども、佐賀の唐津市に天川コシヒカリという米がありますけれども、本当に十数人の生産者でつくっている。私、台風被害で実は行ったんですけれども、ですから、特A、本当に努力を重ねて特Aなんだけれども、品質が落ちてしまった。だけれども、それでもおいしいんですよね。その努力に本当に敬意を表したいな、そういうことが積み重ねられてきたんじゃないのかなと思っております。
田村提出者も災害対策委員であるわけですけれども、近年の台風、豪雨など頻発する甚大な災害の背景に、やはり気候変動の影響が指摘をされていると思います。また、それが農作物の品質低下にも影響を与えるとして、地球温暖化対策とあわせ、気候変動適応法が今国会で議論されているということも承知をしています。
改めて伺いますが、高温や災害に強い農産物を育てるためにも、国と都道府県の果たす役割は大きいと思います。気候変動適応においても種子法が必要だと考えますが、提出者の認識を伺います。
○田村(貴)議員 地球温暖化は、異常気象と甚大な災害をもたらしています。したがって、被害の回避に向けましては、温室効果ガスの排出削減、緩和策です、これを進めるとともに、さまざまな政策領域において適応策を講じることが重要であると考えます。
農政分野においても、将来影響の科学的知見に基づきまして、例えば、高温耐性の農作物品種を開発、普及していくことが重要であります。まさに委員御指摘のとおりであります。
このような品種の生産、普及には時間と費用がかかり、これを民間種子会社のみに委ねることは適当ではなく、国と都道府県が一体となった取組を推進していくことが重要であります。
種子法は、この点から見ても、役割を終えたどころか、これからますます重要な役割を果たすものであると確信をいたしております。