198-衆-農林水産委員会-5号 平成31年4月9日 種子法の復活を

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

きょうは、種子法廃止後の問題点について質問をします。
種子法が廃止されて以降、自治体において種子条例の制定が進んでいます、動きが広がっています。また、自治体から、種子法に関する意見書が国や県に上がっています。
農林水産省は、この動きについて承知をしていますか。状況について紹介してください。


○天羽政府参考人 主要農作物種子法の廃止以降、都道府県で種子に関する条例を制定した道県については九道県、条例の骨子を示すなど制定に向けて具体的な準備をしている県は一県というふうに承知をしております。
また、種子法の廃止に関しまして、平成三十一年三月の末までに都道府県や市町村から届きました農林水産大臣宛ての地方自治法第九十九条に基づく意見書は百十件と承知をしております。


○田村(貴)委員 私がつかんでいる数字はもうちょっと大きいんですけれども、種子法廃止以降、県や道において条例が制定され、条例制定化の動きがある。知事が条例制定に前向きな発言も出ているところであります。
大臣にお伺いしたいんですけれども、全国では条例化がどんどん進んでいるわけです。そして、大臣、十分御承知のことだと思いますけれども、北海道では、稲、大麦、小麦、大豆、こうした北海道の主要農産物に加えて、小豆、エンドウマメ、インゲンマメ、ソバ、こうした北海道の主力産物も対象としている。種子法のときよりも拡充しているわけであります。長野県もソバを対象とする方針を示しています。
種子条例が広がると同時に、従来よりも拡充をしている、こうした状況について、大臣はどのように受けとめておられますか。


○吉川国務大臣 主要農作物種子法の廃止でありますけれども、稲、麦類及び大豆の種子の生産、供給に関して、全ての都道府県に対して、県が奨励する品種を決定するための試験、原種や原原種の生産、種子を生産する圃場の指定や、生産された種子の審査などを法律によって一律に義務づけるというやり方を廃止して、多様なニーズに応じた種子供給体制を構築するために実施されたものでございます。
こうした中で、都道府県が、それぞれの地域の状況に応じて条例を制定して、また、対象作物をふやすなど独自の内容を規定することは、多様な種子の供給のために必要な措置をみずから判断して講じようとしているものと受けとめているところでございます。
これは、多様なニーズに応じた種子供給体制を構築するという種子法廃止の考え方に沿うものであると考えているところでもございます。


○田村(貴)委員 大臣に確認したいんですけれども、このような自治体の自発的な取組について、農林水産省としてはもちろん尊重しますよね。今の御答弁から伺えば、尊重しますよね。妨害とかはないですよね。いかがですか。


○吉川国務大臣 今も申し上げましたとおり、都道府県が、それぞれの地域の状況に応じまして、多様な種子の供給のために必要な措置をみずから判断して講じようとする取組は尊重したいと考えております。


○田村(貴)委員 そこで、農水省にお伺いしたいんですけれども、一昨年の事務次官通知、一二三八号通知ではこのように書かれています。都道府県の種子の業務を直ちに取りやめなくてもいい、民間の参入が進むまでの間、種子の知見を維持し、それを民間事業者に対して提供する役割を担えとしているわけであります。
一方で、先日、政府は、我が党の紙智子参議院議員の質問に対して、今後も都道府県に種子業務に対する地方交付税措置を講ずるとしているわけなんですよね。
矛盾していませんか。直ちに取りやめなくてもいい、つまり、いつかは種子業務を取りやめろというのに、交付税措置をやっている。だから、こういう通知というのは撤回すべきではありませんか。


○天羽政府参考人 先生御指摘の規定でございます平成二十九年の事務次官依命通知、平成二十九年十一月十五日付二九政統第一二三八号の三番目、「種子法廃止後の都道府県の役割」というところに、このような記述がございます。「都道府県に一律の制度を義務付けていた種子法及び関連通知は廃止するものの、都道府県が、これまで実施してきた稲、麦類及び大豆の種子に関する業務のすべてを、直ちに取りやめることを求めているわけではない。」ということでございまして、この趣旨は、種子法の廃止により都道府県への一律の義務づけを廃止したからといって、都道府県が直ちに稲、麦類及び大豆の種子に関する業務から手を引くことで安定的な種子供給ができなくなることのないようにするという趣旨でございます。
また、この同じ次官通知には、都道府県の役割として、「都道府県内における稲、麦類及び大豆の種子の生産や供給の状況を的確に把握し、それぞれの都道府県の実態を踏まえて必要な措置を講じていくことが必要である。」というふうにも規定をしておりまして、都道府県は引き続き、稲、麦類及び大豆の種子供給に当たって重要な役割を担うという考えは変わらないところでございます。


○田村(貴)委員 何か、お話が非常にこんがらがっていますよ。
県の自主的な条例制定は尊重すると大臣は言われました。そして、多様な需要に応じた種子の供給体制の構築、農水省はいいというんでしょう。でも、この通知では、いずれ種子業務は取りやめて民間に提供せよという話なんですよ。矛盾も甚だしいじゃないですか。
自治体の種子の生産とか提供については、あくまで民間参入の間のつなぎと農水省は考えているんですか。つなぎの間だったら条例制定して業務をやっていい、そういう考え方なんですか。通知によればそういう考え方になるじゃないですか。いかがですか。


○天羽政府参考人 先ほど該当の箇所を読ませていただいたとおりでございまして、「都道府県が、これまで実施してきた稲、麦類及び大豆の種子に関する業務のすべてを、直ちに取りやめることを求めているわけではない。」それから、「都道府県内における稲、麦類及び大豆の種子の生産や供給の状況を的確に把握し、それぞれの都道府県の実態を踏まえて必要な措置を講じていくことが必要である。」ということでございますので、都道府県の実情に応じて、それぞれ、条例を定める県もあればそうでない県もありながら、必要な措置を講じていくということだと理解をしております。


○田村(貴)委員 だったら、種子法を廃止する必要はないじゃないですか。
私、福岡県なんですけれども、福岡県の県内六十自治体のうち、十五の市と町が意見書を提出しています。これは後で言いますけれども、皆さん物すごく心配されていますよ、生産者、それから自治体関係者、消費者の方も含めて。
自治体の条例制定は、国が言う民間の参入が進むまでの間、そういう移行期間を視野に置いて定めてはいませんよ。
例えば、大臣、北海道の条例では、「種子の生産に関する施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有する。」と。「責務を有する。」と明記しています。行政が責務を有するとした。種子に対する責任を放棄した国と、種子の生産への責任を負うとした自治体、この決定的な違いをやはり農林水産省は深く認識すべきだと思います。
福岡県の市町村の意見書の中に、こういうくだりがあります。地域の共有財産である種子を民間に委ねた結果、長期的には外資系事業者の独占や、日本の種子市場を支配していく懸念も指摘されています、このことは、我が国の食の安全、安心、食料主権が脅かされることにつながり、県民にとっても大きな問題ですとしています。
種子を民間に委ねれば、長期的には、外資系事業者の独占が起こり、価格が大幅に上昇し、そして農家の経営が圧迫されることにつながるのではありませんか。いかがですか。


○天羽政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、主要農作物種子法の廃止は、稲、麦類及び大豆の種子の生産、供給に関しまして、全ての都道府県に対して一律に義務づけていた法律を廃止し、多様なニーズに応じた種子を官民の総力を挙げて供給する体制を構築するために実施をされたものということでございます。
そもそもでございますけれども、廃止された種子法には、外国資本の参入を防止する規定が入っていたわけではございません。にもかかわらずと申しますか、現時点まで、ほとんど外国資本の参入というものはないわけでございます。
これは、海外の穀倉地帯等の均一な気候条件下で大ロットでの販売を前提に穀物の種子生産を行っている外資系事業者にとって、地域ごとに異なる多様な気候条件に適した多品種が必要な上に、販売単位が比較的小ロットとなる我が国の種子市場は魅力的でないことなどが理由と考えられます。
また、種子法の廃止を契機として、我が国の農業の国際競争力の強化に向けて、官民の総力を挙げ、多様なニーズに応じた種子を供給する体制を構築することとしておりまして、各都道府県は引き続き種子供給に係る事務を実施していくことから、外資を含め少数の民間事業者が市場を独占し、種子価格が大幅に上昇するといった事態は想定されないということでございます。


○田村(貴)委員 今の答弁は詭弁であり、そして重大な事実認識だというふうに言わざるを得ません。国と都道府県がやってきたことを全然違う認識で今すりかえましたが、看過できません。
資料をお配りしています。
日本が目的とするアメリカではどうなっているのか。これは、アメリカにおける面積当たりの種子購入費用の推移であります。
米は、民間育成種のシェアが伸びるにつれて五倍、この二十年間で五倍にはね上がっています。同じく民間企業が圧倒的シェアを占めるトウモロコシも四倍であります。大豆はといいますと、一九八〇年代に公的種子生産事業のシェアは七割を超えていたんです。ところが、現在では、民間開発の種子が九八%になりました。大豆は、上位四社で九〇%を占めて、価格はこの二十年で三倍に上がっています。
大臣にお伺いしますけれども、このように、アメリカでは、民間開発の種子のシェアが伸びて、価格も年々上昇しています。日本の生産者も自治体も、これを懸念しています。種子法廃止で日本はこうならないと断言できますか。大臣、いかがですか。通告しています。


○吉川国務大臣 米国におきまして大豆やトウモロコシの民間開発種子のシェアが伸びてきたという報告があることは承知をいたしております。
一方で、我が国におきましては、そもそも種子法には外資系企業の参入を防止する規定はなかったのでありまするけれども、これらの企業にとって、多品種少量販売が必要となる我が国の穀物種子市場が魅力的でないことなどから、現時点までほとんど参入していない状況にございます。
各都道府県におきましては、引き続き、種子供給にかかわる事務を実施する方針でもございますので、これに要する経費についても、引き続き、地方交付税措置も確保したところでもございます。
多様な需要に応じた種子供給体制の構築に向けまして、官民連携の具体的な動きも出てきていることを踏まえますと、種子法廃止により農業者が不当に高価な種子を購入せざるを得なくなるような事態は、今は想定はされておりません。
農林水産省といたしましては、引き続き、農業者の経営安定に資するように、多様な需要に応じた種子供給体制の構築に向けて、責任を持って、必要な政策を講じてまいりたいと存じます。


○田村(貴)委員 アメリカのようになりませんかと聞いているんですね。お答えになっていないと思います。
民間参入を促進して、そして種子の知見を民間事業者に提供せよ、こういう立場をとっている以上、このようなアメリカのような状況になるということは、これは必至じゃないですか。
お米を始めとした日本の主要農産物について、これまで都道府県の農業試験場が、高い技術によって、味がよくて高品質な品種を開発してきた、安価に提供してきた。きょうやりとりさせていただきましたけれども、この仕組みを壊す理由は、道理はどこにもなかったということが明らかになったと思います。
条例を制定した都道府県を始めとした自治体の動きは、こうしたアメリカのようにならない、今政府が、農水省が方針として掲げていることに対する狙いと動きへの対抗だというふうに私は考えています。
政府は、自治体、そして生産者、消費者、国民の声に応えて直ちに種子法を復活するように要求して、きょうの質問を終わります。
ありがとうございました。