○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。
早速、質問に入ります。
林野庁は、私有人工林において、現状、二〇一五年ですけれども、千五百万立方メートルの国産材供給が十年後に二千八百万立方メートルになると、KPIで示しています。また、森林・林業基本計画では、森林全体で二〇二五年には四千万立方メートルの国産材供給を掲げているところであります。その中心は育成単層林でありまして、基本は五十年周期の主伐の方向であります。
大量の木の切り出しは森林の持つたくさんの機能に対して心配がされるところでありますけれども、切り過ぎではないかなといった私の思いに対して、まず野口参考人は、どのように考えておられるでしょうか。
○野口参考人 お答えします。
かつて国有林では、成長量の倍近くを十数年にわたって切り続けたという歴史があります。その後、むしろ過伐どころか減伐という形で、不景気の中では過ごしてきました。
そういう歴史をいろいろ繰り返してきているんですけれども、今の、二千万ヘクタールを四千万ヘクタール、二五年ですか、というのはなかなか、その達成できる、毎年の推移を見ていただければわかりますけれども、そんなに一気に倍増できるような状況はない。もしこれをやろうとすれば、先ほどのような、五十年お任せして、そしてどんどん切ってくれというような、伐採中心主義的な考え方を導入しない限り、その数字は出てこないなと。現実的にはなかなか難しい。
ただ、将来的には私も、自給率が過半を占めるような、国産材時代に戻ってほしいと思っているんです。現在はずっと外材時代、外材過半時代ですから、そういう点では、国産材がもっとふえることは望ましいことでありますけれども、これは無理をするわけにはいかないので、徐々に、企業体や森林所有者等を育成しながら達成していくべきものであって、山は一気に切り出してできるとかいう、そういうものではないということだけははっきり申し上げたいと思います。
○田村(貴)委員 次は、日高参考人にお伺いしたいと思います。よろしいでしょうか。
資料としていただいた「NJ素流協News」を読ませていただきました。この中で、日高さんが講師として述べられたことがまとめられているんですけれども、「九州では今莫大な量の木材を出しており、「再造林なしには伐ってはいけない」と言われるほど、伐採後の再造林は必須となっている。」また、「二十七年間スギの生産量日本一ということでやってきたが、山を丸坊主にしてしまうリスクを負いながらやってきた。」先ほどの意見陳述の中で、とったら必ず植えるという方向性を日高さんからお伺いして、それは大変重要なことだというふうに思いました。
現状、九州宮崎の方で、私は、この状況は、切り過ぎている状況があるのかなというふうに思ったんですけれども、業界の最先端におられる日高さんとしては、どういうふうに受けとめておられるんでしょうか。
○日高参考人 あくまでも私の個人的な見解ですが、過伐、切り過ぎというよりも、偏りは出てきておる。それから、宮崎の方でも、安定して莫大な量が二十八年間連続、生産量、杉の生産ではトップを走っているような状況が続いております。
その中で、近々の再造林率を見ましたら、宮崎の再造林率、これも私の見解です、大体、年間二千五百から二千八百ヘクタールの中で、再造林率が約八割程度、宮崎県では実行されておると思います。
再造林に対し、確かに切ることは切るんですけれども、再造林においては、宮崎県も、全国でも北海道に次いでのトップクラスではなかろうか。北海道の場合は面積が広うございますから。
それと、苗木も足らないというような状況でありましたけれども、ほとんど地元の苗木で網羅して再造林をしておるという状況ではなかろうかと思います。
○田村(貴)委員 私、国有林で、本当に荒い施業をしているところ、それから、大規模に皆伐してしまって、その後植林していないところを見ました。そういう懸念があるものですから、今度の法案の中身については、本当に十分審議しなければいけないなというふうに思っております。
続いて、日高参考人にお伺いしたいんですけれども、このニュースの中で、「六年前に中国木材の工場ができた」、これは県北ですね。「同時期に、バイオマスも出てきて、それこそ県をあげて「伐れ伐れ」という状況でやってきた。」と。
やはり、需要が高まってきている、バイオマスだ、そして行政の方からも、もう今はとれ、そして加工せよというような方向性にあるんでしょうか。
○日高参考人 そうですね、タイミング的に、中国木材の進出とともに、この当時は中国木材の大型工場だけではなかったんですね、バイオマスも同時に話が出てきた。それから、木材貿易、中国を中心として、丸太の原料が欲しいということで同時に出てきた経緯があります。
その中で、宮崎県は、その当時、六、七年前は、約百五、六十万立方あったものが、大体三十万から四十万立方伸ばして、地域の加工場に原料が足らないということで増産をした経緯はございます。
○田村(貴)委員 そのバイオマスの話なんですけれども、続いて土屋参考人にお伺いしたいと思います。
資料として読ませていただいたUEDレポート、この中で先生は研究者の心配の声を挙げて、伐採の進展によっては森林が減少してしまう、国土保全上の問題が起きるという声も紹介されて、木材がかなり引く手あまたになってきて、一番大きいのはバイオマスエネルギー、ちょっと前には考えられなかった状況も起きているのが現在の状況というふうに述べておられます。
切り過ぎ、そして今そういう傾向にあるのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○土屋参考人 御質問ありがとうございます。それから、余り一般に流布していない雑誌まで見ていただきまして、どうもありがとうございます。
今御紹介がありましたように、特に木質バイオマスについては、発電についてはかなりの大規模な供給が必要なわけで、それの懸念というのは今御紹介のとおりです。
しかも、かなり他業界からの参入した業者等も多いので、いわゆる森林の経営の専門家ではない方々がそういうのに携わっていることもあって、その辺のところの持続性というようなことを業者の方がそれほど認識されていない可能性もあり、かなり懸念材料があると思います。
もう一つは、地域にかなり偏りがあって、特に九州なんかは、この中でも今議論があるように、かなり逼迫しているという状況はあります。
そうなってくると、やはり、森林には森林経営計画、若しくはもう少し上の、森林のさまざまな計画制度がございますので、その計画制度のしっかりした運用というのがこれから問われてくるところになってくると思っております。
○田村(貴)委員 そうした中で、やはり切り過ぎの状況があり、これから短伐期で主伐をしていくという方向性の中にあって、そうすると、森林の多面的機能が損なわれるのではないか、再植林の保証はあっていくのかという問題にぶち当たっていくと思うんですけれども、最後に立花参考人に、切り過ぎではないか、この現状についての先生の御所見を伺いたいと思います。
○立花参考人 御質問ありがとうございます。
ちょっと、まず最初に、先ほど、国有林の今回の権利設定にかかわって、植林の件がかなり問題視されていると思うんですけれども、あくまで今回は、採取権、伐採なんですね。そこの権利であって、再造林の部分は、民間、林業経営者に対して申し入れてやってもらう、そのときには改めてその契約を結んでやってもらうということですので、やや誤解があるのかなというのをきょう感じております。
もし林業経営者の方がやらなければ、林野庁が自分の責任で自分の土地に木を植えるということですので、それは我々の税金を使って植えていくということになるというふうに私は認識しております。ですから、この部分については、再造林どうのこうのというのは、これは当然やるものであるという認識です。
あと、今の御質問につきましては、まず、切り過ぎではないかというのを、きょう、私、冒頭の意見陳述で申し上げましたけれども、五百万ヘクタールの人工林を生産林として、年間十万ヘクタールを主伐して、再造林も行い、間に間伐も行うということをやるだけで、私の計算では五千万立方メートルの生産量は可能です。つまり、例えば宮崎県の杉の四十五年生、五十年生だと、一ヘクタール当たり五百立方メートルとか、場所によっては六百立方メートル以上の生産ができます。北海道のカラマツの人工林、四十年生ぐらいでも、主伐で三百三十立方メートルぐらいは出てきます。つまり、押しなべてみて、少なく見積もっても三百五十立方メートルだとヘクタール当たりにしたときに、十分にそれは、十万ヘクタールで五千立方メートルの生産は可能なんですね。ですから、それをもって切り過ぎという話にはならないと私は思います。
つまり、面積としてどれだけ主伐されているのか、その後にそれがしっかりと再造林されているかというのを我々は見るべきで、その再造林についても、実は、私、冒頭に申し上げましたように、ある程度もうゾーニングをした上で生産林は決めていく方がいい、ある程度区切りをした方がいいと思っていますので、そうすることによって、ある程度、今私が申し上げたようなことは可能になってくるというふうに思います。
以上です。
○田村(貴)委員 そうした林野庁の掲げる国産材の供給が、大規模な供給は可能だというお話も今出たんですけれども、野口参考人に改めてお伺いします。
やはり森林の多面的機能、これは非常に大事だというふうに思います。それから、先生が先ほど言われた、公益性に加えて公共性ですよね。ここの点で、私は、熊本地震も、それから九州北部水害も、あらゆるところの災害現場に行ってきて、まさに森林の涵養というのは物すごく大事だなと。そして、短期間における主伐ではなくて長いスパンの中での多間伐、これが今求められているんじゃないかなというふうに思っているわけであります。
皆伐は、山肌がむき出しになり、豪雨、台風、地震によって地割れが起きたり、いろいろな状況をつくり出してまいりました。洪水も招いてまいります。改めて、この多面的機能という観点に照らしてみて、今から大量に木を切っていくという方向性について、先生のお考えをお伺いしたいと思います。
○野口参考人 私は、世界史的な流れの中で、今、日本が考えているのはむしろ逆行しているという理解であります。
森林の役割に対する国民の期待という、政府が行っているアンケート調査によっても、常時、上位三項目の中には、災害防止とか、それから近年では温暖化が入ってきたり、水資源涵養、こういったいわゆる公益的機能というのが上位を占めています。ということは、国民は、森林のそういった多面的機能の中で、我々の命にかかわるような、そういうところに多くの役割を期待しているということであります。
更に言えば、温暖化防止については、これは三・九%を、日本が五%を削減するという言い方を京都議定書のときに行った、日本で行われた会議であったわけですけれども、そのときに、五%を将来にわたって削減するということを言いましたが、そのうちの三・八、後には三・九に訂正しましたけれども、その部分は森林が吸収源になっている。
つまり、世界的な公約の中でも森林のCO2吸収能力というのは非常に高く評価されているわけでありまして、それが切られてしまいますと、その分だけ吸収源は減ってくるというふうになりますので、やはり切り方に関しても、秩序あるというか、つまり、山をできるだけ裸にしない状態で、択伐という言い方をしますけれども、間伐や択伐を繰り返す。これは決してコスト的に安いものではありません。安いものではありませんけれども、しかし、国民の命や暮らしを守るためには、そういったことも含めてしっかり手当てをしていくべきではないかというふうに思います。
○田村(貴)委員 私も、長伐期多間伐のやり方が、森林がCO2を吸収する役割をしっかり保っていけるんじゃないかなというふうに思っております。
同じ質問で、土屋先生、いかがでしょうか。今からの方向性の中で、三・九%、森にその役割を担わせる、地球温暖化対策、これがちゃんと維持し、そしてまた発展が遂げられるであろうかという疑問に対してはいかがでしょうか。
○土屋参考人 御質問ありがとうございます。
地球温暖化の対策としては、これはやはり間伐をいかにやっていくかというのが非常に重要な部分だというのは御承知のとおりで、今おっしゃったとおりだと思います。
ただ、もう片っ方で、多間伐をやっていっても林齢は上がっていきますので、その一部分についてはやはり更新をして次の世代をつくっていくということも同時に大事でして、これはもうほとんど同じことを繰り返しているんですけれども、要するに、バランスをいかにとるかであって、ただし、そこで皆伐についての懸念はこれまでも発言がいろいろあったわけですが、例えば小面積の皆伐をなるべく離してやるような形の、技術的な問題である程度解決が可能ですから、やはり間伐とそれから皆伐はある程度組み合わせることが必要だとは思っております。
以上です。
○田村(貴)委員 はい、わかりました。
先日のこの法案審議のときに林野庁の答弁でも明らかになったんですけれども、国有林一ヘクタールの再造林、保育にかかる費用が二百二十万円、これは一ヘクタール当たりですね、そして立ち木の販売額が百三十万円であると。なかなか国有林で採算がとれないという状況にあることが明らかになったわけであります。
野口先生に伺いますけれども、国有林の歴史的な経緯も踏まえて問題点の御指摘がありました。なぜ、そういう、採算がとれない、そして、山で意欲とそしてやる気を起こさせる施業ができないのかといった問題、それは根本的にはどこにあるのかなと。それを改善して改革するならば、どこに国有林野のいわゆる林産物の持続的、計画的供給が、先生が言われた持続的、計画的供給がもたらされるのか、そのポイントについて教えていただけないでしょうか。
○野口参考人 ありがとうございます。
大変難しい問題ではあるんですけれども、私の理解では、まず、国産材が非常に価格が安い、あるいは国有林も赤字が続いてきたというのは、やはり外材が過半を超えてきたという外材体制下の中で進んできたものであるということがまず一点です。
それから、国有林の独自の課題としては、先ほど、一九七八年に改善計画が出されました。そこから何が行われたかといいますと、自前で借金をして、そしてそれで採算を何とか償え、そういう言い方をしてくるわけですけれども、もう既に木材価格は実際は非常に低下してきている。
林業利子率という考え方があります。つまり、林業を五十年の投資として考えたときに、伐採した収入で初期投資に対してどれだけの利子で回ったのかというのが林業利子率です。これは、既にもう一九九〇年代にはマイナスになっています。補助金が入ることによって、辛うじて何とかなってきたというのが木材価格であります。
一方、国有林にはどういう借金を充てられたかといいますと、財政投融資資金です。これは、一般的に悪いとか高いとか、そういうことではありません。例えば住宅金融公庫とかそういうことのもとになる、そういう意味では安定した財源というふうに言っていいんですけれども、ところが、林業経営をやるのに対しては余りに高い金利である。数%の金利のものを借りて、マイナス、プラスマイナスのところを動いているような経営をやったら、誰が見たって、これは赤字が膨らむに決まっているじゃないですか。そういうことで、サラ金財政に国有林ははまってしまったということであります。
ですから、私は、一般会計化したということは、もう冒頭からボタンのかけ違いだったということを申しました。そういう意味では、喜ばしいことではありますけれども、しかし、ここまで来て本当に一般会計で国民の負担にするのであれば、しっかりとした山の管理経営をやっていただく。
それは、当然、税金が投入されるわけですから、国民のための山づくりというところで、適度な、成長量に見合った伐採と、それから、より多面的な機能の充実、地域貢献、これをやっていくという、まさに三大使命をしっかり果たさなければ、会計だけは一般につけた、しかし、やっていることは乱暴なことをやっている、これでは国民は納得できないのではないかというふうに思います。
○田村(貴)委員 大変参考になりました。
四人の参考人の皆さん、ありがとうございました。
質問を終わります。