○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
法案に入る前に、大雨、台風被害による農業被害対策についてお伺いをします。
まず最初に、ことし、九州北部豪雨、それから台風十五号、台風十九号始め、たくさんの災害に農家、農地が見舞われました。一連の災害における農業被害額の合計はどのぐらいになっているのか教えてください。
そして、大臣にお伺いしたいんですけれども、新しい対策を発表すると。私、前回の所信質疑のときに、共済未加入者の負担軽減策、それから、収入見込みのない農家に対する所得を救済する手だて、それから、田畑に入った災害ごみ除去における農家負担をゼロにすること、冠水した米の支援とか等々、やはり今までにない対策に踏み込まないと離農者を生み出してしまうということで、対策の強化、支援策の拡大を求めたところでありますけれども、今度打ち出される政策というのはそういう方向性になっているのかについて教えていただきたいと思います。
○岩濱政府参考人 まず、事実関係でございますのでお答えさせていただきます。
八月以降の大雨と台風による農林水産関係の現時点での被害額は、総額二千九百四十四億円となっております。特に、台風十五号では、農業用ハウスの損壊を含めまして五百九億円、台風十九号等の被害については、農地、農業用水利施設の一千二百六十六億円を含めまして二千百四十三億円の被害となっているところでございます。
○江藤国務大臣 前回御質問いただきました内容につきましては、胸に刻んで、現場を見ながら、省内での検討もさせていただいたつもりでございます。
まず、共済未加入者の方について答弁をいたしました。経営判断の中で共済に入った方と共済に入っていない方と不公平感があってはいけないんじゃないかということを申し上げました。行ったところの、視察させていただいた県知事さんや市長さんからもそういう御指摘はありました。
しかし、現場をやはり見るにつけ、余りにも大きい災害であるということを考えて、被災者支援型の十分の三ではなかなか厳しい。十分の三を引き上げるということを今、内容についてはちょっとルールで、パッケージ発表までは言えないんですけれども、十分の三から上げるという方向で今やっております。
この十分の三を上げれば、十分の三の部分に対して交付税措置の七〇%ルールがありますから、十分の三が十分の例えば四とか五とかに上がれば、その分、国で見られる分がふえますから、交付税措置で当該の県が見てくれても、県の負担はその分減るということでございます。
そして、ハウスの場合と機械の場合とそれから乾燥機の場合と、いろいろ、ちょっとメニュー的になかなか全部説明するには時間がかかりますのできょうはいたしませんが、言えない部分があるので御理解いただきたいんですけれども、それをしっかりやらせていただく予定です。
米の、いわゆるライスセンターにある部分についても、今までのスキームではできない。しかし、常総の水害のときにはやったではないかという過去の事例はございます。ですから、今回行ったところも、例えば、個人の農家の方でも地域の方々でも、なかなか自分で水田を維持できないので引き受けてくれと。その分については引き受けて、お米で返す。しかし、返すお米が全部水につかってしまった。それについてはお金でその農家が負担しなきゃいけないのかということについては、非常にこれは厳しい問題なので、これについても前向きな検討をさせていただいております。
稲わらにつきましても、いっぱい流れてしまいましたので、広域処理をしていただく方向で一時は農水省と環境省と協力してやってまいりましたが、一立方当たり五千円を出させていただくということでありますので、できれば、大体、軽トラにしっかり積むと三立方ぐらい積めますので、一回運ぶと大体一万五千円ぐらいにはなりますから、二往復すると三万円ぐらいにはなるので、業者に委託すれば業者さんのお金になっちゃいますけれども、御自身で大変ですけれどもやっていただくと多少なりとも農家の収入にはつながるという手法もあります。
そういったことも含めて、百点、これで委員から、よくやった、申し分ないという水準までいけるかどうかは、財政上の理由とかいろいろな理由でいけないかもしれませんが、農水省としては、十五号でまとめた対策以上の水準まで踏み込んだものをまとめさせていただいているつもりでございます。
○田村(貴)委員 従来にない対策をしっかり進めていただきたいと思います。
大臣、軽トラックとおっしゃったので、軽トラックの問題です。
軽トラックが数え切れないぐらいに被災しています。それで、農業用機械が水没したりして使えなくなれば、これは強い農業・担い手づくり総合支援交付金で補助金の支援制度がありますけれども、軽トラックはその対象になっていないんですよね。
恐らく委員の皆さんも被災地で聞かれたと思うんですけれども、軽トラックを何とか支援してください、軽トラックがなければ、全ての農作業に欠かすことのできない車なんだから、そういう声を私も強く聞いているところであります。軽トラックがなければ災害ごみの片づけもできません。営農再開ができたとしても、資材を運ぶことすらできないわけであります。
この際、新事業を打ち出されるというのであれば、交付金事業の対象とすべきではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。
○江藤国務大臣 私も実際に被災地に行って、同様の御指摘はいただきました。何とかしたいという気持ちは私も強く持っております。
しかし、いろいろと省内で検討した結果を正直に申し上げますが、余りにも汎用性が高い。例えば、トラクターで病院に行くことはないですよね。ナンバーをつけているトラクターもないことはないですけれども、基本的に農業用機械。コンバインについては、もちろん稲刈りにしか使わない。田植機もそうです。
しかし、軽トラについては、お買物に行ったり病院に通院したり、いろいろな日常の生活の中で使っているということであって、なかなか農業機械という中のくくりに入れるのは難しいというのが現状でございます。
○田村(貴)委員 営農再開に欠かすことができない車である、これが調達できる、そして安心してきょうから乗り回せるということになれば、やはり復旧も加速的に進んでいくという観点に立っていただいて、いま一度検討していただきたいと思います。
法案について質問します。
資料をお配りさせていただいていますけれども、これは、六月四日に行われた第三回農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議に出された資料、事業者からのヒアリングで明らかになった問題という資料であります。加工施設のHACCP認定が遅いとの意見で、問題点では、国の施設認定のスピードが遅いとされています。省庁や地方機関の人手不足が原因で手続に時間がかかるとあります。
法律をつくって、スピードアップは図られるんでしょうか。それから、人員をふやすことになっているんでしょうか。説明をいただけますか。
○塩川政府参考人 お答え申し上げます。
本法案によりまして、農林水産省に設置する輸出本部におきまして、個々の施設認定の担当省庁やスケジュールを明確にした実行計画の工程表を作成いたしまして、進捗管理を行うことで、迅速に認定を進めていくことになります。
また、本法案によりまして、証明書の発行、区域の指定、それから施設の認定につきまして法律上の根拠を定め、行政の責任や分担関係を定めることにより、行政による事務をスピードアップするということになります。
さらに、農林水産省としても、本法案とあわせまして、新たに証明書等を担当する組織を創設する。具体的には、食料産業局、担当局で五十名程度の新しい課を今要求しているところでございますし、また、地方農政局でも二十名程度の増員を要求しているところでございまして、あわせて、都道府県における体制整備につきましてもしっかり支援をしていきたいというふうに思っているところでございます。
○田村(貴)委員 人は要求するけれども、定数増員は図らないという理解でいいんでしょうかね。
これまでの説明で、ワンストップという言葉を農水省の担当者の方から大分聞いたんですけれども、この法案を読むと、主務大臣や知事が証明書について発行することができると書いてあるだけなんですよね。窓口の一本化とか、事務の煩雑さを解消する規定が書かれていないんですよね。大丈夫なんですか。一言どうですか。
○塩川政府参考人 お答え申し上げます。
このまさにワンストップ化につきましては、法律上明記することではなくて、これは予算でしっかりシステムを構築して、農林水産省のところで、申請があればしっかりそれが発行できるような、そんな体制をできるところから速やかにやっていきたいというふうに思っております。
○田村(貴)委員 やはり法律にちゃんと書かないといけないと思いますよ。
もう一問聞きますけれども、この法律がないとできないことというのは一体何なんですか。
○塩川政府参考人 証明書の発行、あるいは施設の認定、今これは、各省庁が所掌事務の範囲内でやっているところでありまして、通知等に基づいてやっております。今回、これを法律に基づいてしっかり位置づけることによりまして、担当省庁が明確になり責任関係の分担になるということで、よりスピードアップが図られる、そういうふうに考えております。
○田村(貴)委員 スピードアップが図られるというけれども、今からやろうとしていることは現行でもやっていることであり、現行で全てできることですよね。窓口の一元化も、それから事務の煩雑さを解消する仕事についても、融資も、相手国との協議も、これは今の枠組みでもできる、別に新法がなくてもできるということであります。
そういった点において、大臣にお伺いしたいんですけれども、所信質疑でも私指摘しましたが、この十年間で耕地面積は十七万三千ヘクタール減りました。販売農家戸数は四十六万七千戸減りました。基幹的農業従事者は六十万人も減少しています。輸出増といっても、外国産を原料にした加工食品などが多くて、国内農業の生産拡大にはなかなか結びついていないという現実があります。
大臣にお伺いしたいのは、この法律は、農業生産基盤を強化させる目的を持ち合わせているのでしょうか。
○江藤国務大臣 これから先、いろいろなところに売り先を求めていくことは極めて有効だと思っております。農家の方々、漁業者の方々、林家の方々が一生懸命働いて、そして生産した製品が、どこのマーケットに限らず、しっかりと評価をされて、いい値段で取引をされて、それが農家の皆様方の所得につながっていく。そして、農業の魅力が増すことによって、農林水産業自体の生産基盤が強化されて、それがまた回り回って輸出に対する意欲にもつながっていく。そういうことになればよいというふうに考えております。
○田村(貴)委員 法の目的には、農林水産業及び食品産業の持続的発展に寄与すると書いてあるわけですね。持続的発展ができていない現状があるわけなんですよ。いろいろお話を聞いても、じゃ、今の農家の所得が向上するとか、それから農地や農業従事者がいかにふえていくのかといったところのビジョンが示されていません。これは問題であると思います。
大臣にもう一問お伺いしたいんですけれども、今回、農林水産物輸出促進法は、日米貿易協定と同時に今国会に提出されています。輸出戦略がTPPやEPAと表裏一体の関係にあることは安倍総理の所信表明でも述べられたところです。際限のない輸入拡大路線を安倍政権は推し進めているところですけれども、今、日本の政府が力を入れること、最もやるべきことは、国内需要を満たす農業生産の拡大ではないのか。
輸入額は輸出額の十倍です。九兆六千億円に拡大し、食料自給率は三七%に今下がっているんですよね。これだけの輸入拡大で、それは我慢してくれ、今度は輸出で勝負してくれ、これは本末転倒した議論だと私は思うわけです。
ある農業の専門家は、輸出拡大本部じゃなくて、食料自給率対策本部を今すぐ設置すべきではないかと言われたんですけれども、私はまさにそのとおりだというふうに思います。国内需要を満たす農業生産の拡大に今こそ踏み出すべきではありませんか。いかがですか。
○江藤国務大臣 食料を国内で賄っていくことは、国家として大変重要な題目だというふうに認識をいたしております。
一方、日本国民の中では大変食の多様化が進んでいて、外国からの品物を求めているという現実もあります。ヨーロッパなんかでは、フランスなんかも、いろいろな国もそうですけれども、主食に対する嗜好が、長い歴史の中でほぼほぼ変わっていない。日本の場合は、主食の米に対するいわゆる嗜好がどんどん下がっていって、米食からパン食へと変わっていくような、いわゆる消費者の嗜好の変化というものも一側面としてはあると思います。
委員が御指摘されたように、輸出に一生懸命になるのもいいが、国内の自給率を高めるための政策をもっと充実させるべきだという御指摘は、それはもうもっともだと思いますから、両方やらせていただきたいというふうに考えております。
○田村(貴)委員 輸出拡大政策というのは、攻めの農政として、安倍政権のもとで位置づけられています。しかし、それは、足元の国内需要が外国産にどんどん攻められていることに対して目をそらした議論と言わなければなりません。
そのことを指摘して、きょうの質問を終わります。