198-衆-環境委員会-7号 2019年5月31日 殺処分なくす姿勢評価 動物愛護法改正案

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

提出者、それから環境省の方に質問をします。
動物愛護、管理の問題を考えるときに、私は、やはり殺処分を減らしていく、殺処分ゼロ、これを目指す取組が何よりも大事であると考えております。
今回の法改正は、殺処分ゼロに向けて、なくす方向に向けてどのような役割を果たすものとなっていくんでしょうか。


○生方委員 御質問ありがとうございました。
今回の法改正は、動物取扱業のさらなる適正化と、一般の飼い主の飼養も含めた動物の不適切な取扱いへの対応を強化しようとするものであります。
例えば、第一種動物取扱業者が遵守すべき基準の具体化により、第一種動物取扱事業者による不適正飼養を防ぐことができる、また、適正な飼養を行うことが困難な飼い主については、繁殖を防止する措置を義務づけることにいたしております。さらに、マイクロチップを利用した犬、猫の登録制度の導入により所有者が判明しやすくなるほか、所有者不明の犬、猫の引取りについて、一定の場合、都道府県等が拒否できることを明記しております。
これらの制度を設けることにより、不適切に飼養される動物や所有者が判明しない動物が減少し、その結果として殺処分が減少していくことになるというふうに期待をいたしております。
また、殺処分の方法についても、原則、先ほども述べましたが、ガス室での処分は禁止ということになります。ガス室では、一度に大量の犬、猫を殺処分することができます。それが禁止されることによって大量に処分することができないということは、限りなくゼロに近づいていくことができるのではないかというふうに期待をいたしております。


○田村(貴)委員 生方議員、私も、地方議員をしているときに、大分前なんですけれども、動物管理センターで、その場を見る機会がありました。多数の犬、猫が一気に殺処分されるということは、本当に胸が苦しくなり、何としてでもこの状況をなくさなければいけないと、その当時の思いは今に生きております。この法律によって殺処分が減らされることを願ってやみません。
出生後五十六日を経過しない子犬や子猫の親からの引き離しを禁じている八週齢規制でありますけれども、これも一日も早く実施すべきであります。
なぜ本改正案では、施行期日が公布の日から二年を超えない範囲とされたのでしょうか。そのことについて説明をいただきたいと思います。


○生方委員 いわゆる八週齢規制に関する激変緩和措置の廃止については、犬、猫等販売業に対する影響が少なからずある可能性も否定はできません。
このことから、円滑に八週齢規制を導入できるように、施行を二年を超えない範囲内としたものでございます。


○田村(貴)委員 それが、今まで長い期間これが実施されなかったという期間も含めたら、なぜまだ二年もなのかということの課題は残るかなというふうに思います。
多頭飼育の崩壊の問題もあります。多頭飼育崩壊の場合は、飼っている人が、例えば認知症や失業などで社会的に孤立を深めてしまったり、動物に依存する例が典型的との指摘もあるわけであります。
したがって、都道府県知事による立入検査については、飼い主の人権にも配慮した対応が必要だというふうに考えます。そうした問題の解決に向かっては福祉専門職との連携が不可欠と私は考えますけれども、この点についてはいかがでしょうか。


○小宮山委員 質問ありがとうございます。
今回の法改正では、不適切飼養について立入検査の規定を設けましたが、それにあわせて、緩やかな指導又は助言を行うことができる旨を法律上明記いたしました。これは第二十五条一項になりますが、これにより、より人権に配慮した手段を設けたと考えております。
これは、個々の飼い主の事情に応じて細やかな対応をする必要性を踏まえたものでもあり、加えて、今回の法改正では、動物愛護に関する部局と公衆衛生、福祉に関する部局との連携の強化について新たに規定することとしており、御指摘の動物の適正飼養と福祉の関連性にも留意した改正となっております。


○田村(貴)委員 わかりました。
続いての質問でありますけれども、動物の殺傷、虐待に対する罰則についてであります。
懲役五年以下、罰金五百万円以下に引き上げた理由について説明をいただきたいと思います。
また、その虐待等に対して、また殺傷に対して、厳罰化してもこうした動物虐待はなくならないとの意見もあります。この点について、提出者はいかがお考えでしょうか。


○小宮山委員 我が国において、犬、猫、動物愛護は、今や多くの家庭において、家族の一員としてかけがえのない存在となっております。そして、人とのつながりが以前よりも強くなっている中、愛護動物を殺傷する行為に対する社会的非難も強くなっていると認識しております。
昨今の残虐な事例を踏まえますと、動物殺傷罪の保護法益は、動物を愛護する気風という、公序良俗という意味においては大変変わってきているところではありますが、動物もやはり命でありまして、物でもございません。そのようなことを考えますと、今回の法改正では、動物殺傷罪の法定刑を五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金とすることと、大幅に刑罰を重くすることによって、この一定の抑制効果が期待できるものと考えております。
今までよりも罰を大きくすること、また、これに関しましては、やはり刑罰だけではなく、先ほども言いましたが、動物を愛護する気風という、秩序、良俗というところにおいてもしっかりと、動物虐待、そうしたものがなくなることを願っております。


○田村(貴)委員 厳罰化をもってしてこの問題は解決できないというところ、もうちょっと時間があったら、最後、生方議員にもお尋ねしたいと思うんですけれども、その前に、マイクロチップの装着の義務化について、マイクロチップの装着がなぜ必要なのか、そして、ちょっと通告にないんですけれども、もしマイクロチップを装着していない犬や猫がいた場合に、これはやはり殺処分が早まってしまうんじゃないか、優先されてしまうんじゃないかというような懸念も、そういう声もあるんですけれども、そういうことについてはいかがお考えでしょうか。


○小宮山委員 まず、犬、猫の所有者が判明しやすくなるという効果が挙げられます。マイクロチップが装着され、犬、猫の登録が行われるとき、また、これは、例えば災害時など、引き取った、また逃げた犬、猫の返還が効率的に行われる。その結果、犬、猫の殺処分数が減少することも期待されております。
また、所有者が明らかになることで、犬、猫について管理責任を負う者が明らかになることで、適正飼養の確保につながり、その結果、犬、猫の遺棄などが減少することも期待しております。
加えて、登録を受けた犬、猫を譲り受けた者は変更登録を受けなければならないこととしており、このことにより、トレーサビリティーの確保にも期待をしているところでもあります。
ただ、今委員が御指摘のとおり、マイクロチップの装着がないことによって所有者が判明をしない。しかし、それも、これまでの法の中にもございますけれども、都道府県の対応等にもかかわりますが、殺処分につながるのではなく、やはり引取りをしないこととか、そういったことも法改正の中で示しておりますので、殺処分に対応することには直接つながらないように法改正がされたというふうに認識をしております。


○田村(貴)委員 そのチップの装着の有無をもってして悲劇が生まれないということを私は望みたいというふうに思います。
それから、動物愛護センターの設置など都道府県等における業務拡充が図られること、これは非常に重要だというふうに考えております。必要な職員の確保、それから自治体職員の定数の増員を含めて、国の責任でやはり保障する措置というのを図っていかなければ。施策を前に進めていく、そして愛護と管理のこの法律を本当に実践するためには、やはりマンパワーが必要だ、それから支援する人たちとの連携も必要だというふうに思います。こうしたところの措置について、いかがお考えでしょうか。


○生方委員 今回の法律改正の目玉の一つに、動物愛護管理センターの位置づけを変えるというのがございました。動物愛護管理センターという名前でありながら、その中に殺処分の施設、大規模なものを持っているということになると、名前とやっていることが矛盾しているんじゃないかということもございましたので、今回の法改正の中で、本来の動物愛護センターの役割を果たせるようにしていこうではないかというのがこの法律をつくった一つの目的でございました。
殺処分をするガス室をなくすということになれば、これはやはり多くの予算措置をとらなければいけないということでございますので、環境省において、これから先、その措置をしてもらわなければいけないというふうに考えております。
また、委員が今御指摘になったように、今回の法改正では第一種取扱業者に対する規制強化などが盛り込まれておりますが、本改正案の内容を実効的なものにするためには必要な体制をとることが重要であり、また、人員を確保するということが何よりも大事だというふうに思っております。
そのためにはやはり予算措置が必要であり、今、動物愛護関連予算は大変少ない額でございますので、我々も、額を十倍あるいは百倍ぐらいに引き上げるように、議員としても努力をしていきたいというふうに思いますので、御指摘、大変ありがとうございました。


○田村(貴)委員 私は、動物の殺傷、それから虐待、遺棄等々の行為はやはり許されないというふうに思います。これをなくすためには、やはり知恵を寄せなければいけないと思います。厳罰化もその方法の一つかもわかりません。小宮山議員から、抑止と抑制力の効果があるというふうにもありました。
それはそれとして、先日、川崎市で、大人と子供を巻き込む殺傷事件がありました。私も本当にあのニュースで体が凍るばかりに驚いたわけなんですけれども、こうした事件が相次いでいるわけであります。
人を殺傷する、動物を殺傷してしまう、その根本にどういう心理が働くのか。なぜ人をそういう方向に向かわせてしまうのか。その解決はいかにして導き出されるのか。これは社会全体の問題でもあります。社会の病理も絡んでくる話でもあります。政治も深くかかわってくるのではないかなと思います。
自分が人として認められていない、社会的孤立感を感じてしまう、憂さ晴らしがしたい、うっぷん晴らしがしたい、いろいろな要素が積み重なって、こうした痛ましい事故とか現象を生んでいるというふうに考えています。一つの解答では得られない難問だと思いますけれども、やはり社会全体の問題として、その社会の病理を正していくことがやはり国会にも求められるんじゃないかなと思います。
通告はいたしておりませんけれども、こうした残忍な問題を解決するためにどういうことが求められるのか、提出者の方からお考えを聞かせていただきたいと思います。


○生方委員 田村議員の御質問の指摘の中で、厳罰化だけすれば防げるものではないというような御指摘がございました。確かにそのとおりなんですけれども、今の二年、二百万円以下、前の法律では、物、器物破損よりも罪状が軽いということでございますので、やはりそれは我々は納得ができないということで、五年、五百万にした一番大きな目的は、もちろん抑止の効果が多少はあるだろうということと、やはり、警察の力の入れ方も違うのではないかと。二年、二百万ということになりますと、やはり、警察の方も残念ながら余り力が入らないかもしれない。でも、五年、五百万ということになりますと、かなり重い罪でございますから、警察の方も力を入れてくれるのではないか。
今、実際にこうやって虐待が行われているよというふうに届け出ても、なかなか警察の方も人員が足りるわけではございませんから、適切に対応できるわけではございませんので、厳罰化をすることによって、多分、警察の方もそれなりの人員を整えてくれるものだというふうに我々は期待をいたしておりますので、そうした意味からも、虐待が少なくなってくれるのではないかというふうに期待をいたしております。


○田村(貴)委員 今の項目、論点についても、私たちも議論をして、そういう方向については基本的に了承したということであります。もう一つは、やはり、もっと大きな問題が潜んでいるということも含めて、また考えていかなければいけないというふうに考えております。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。