【環境委員会】大気汚染防止法改定案に対する反対討論

○田村(貴)委員 日本共産党を代表して、大気汚染防止法の一部を改正する法律案の反対討論を行います。
二〇一八年の石綿による中皮種や肺がんの死亡者数は四千六百五十人に上り、同年の交通事故の死亡者数三千五百三十二人を大きく上回りました。石綿は、二〇〇六年に全面使用禁止になるまでは、吹きつけ建材や断熱材を始め、成形板や塗装、コンクリートの表面にも使用されており、総数は三千三百万棟にも及びます。
二〇二八年には、これらの解体がピークを迎えます。抜本的な飛散防止対策がなされなければ、石綿暴露により、多くの労働者、市民、そして子供たちに甚大な健康被害が及ぼされます。
しかしながら、政府案は、石綿飛散、暴露防止の対策において最も重要な、建築物の解体及びリフォームの際の大気濃度測定の義務化を見送っています。
また、今回新たな規制対象となるレベル3建材について、事前調査の対象としただけで、都道府県への作業実施届の義務づけや、隔離養生や集じん・排気装置の設置を不要としています。
レベル3建材は、切断や破砕をせず解体するか、散水等による湿潤化で飛散性が低くなるといいますが、解体現場では形ばかりの散水で多量の粉じんが舞うなど、飛散防止となりません。さらには、飛散性が極めて高い珪酸カルシウム板第一種を始め、レベル3建材であっても石綿は飛散し、健康被害を及ぼします。
さらに、違反者に直接罰を科すとしましたが、過失は対象にせず、法定刑の上限も低く、抑止力は期待できません。
これまで規制の対象レベルであった1、2建材であっても、違法工事は繰り返されてきました。保育園舎に吹きつけ石綿があることを知りながら飛散防止対策を怠り、何と保育中に改修工事が行われ、多数の園児と職員が暴露した長野県飯田市の事件など、重大な石綿粉じんの飛散事故など過失を装い処分を免れる悪質な事件が起きています。
悪性中皮種の病状は筆舌に尽くしがたいものです。進行すると激しい痛みが絶え間なく襲い続け、治癒をすることはなく、命が奪われます。このような残酷な病気は何としても防がなければなりません。
政府案では、規制を強化するどころか、石綿飛散、暴露を拡大する可能性すらあることを強く指摘し、反対討論といたします。
立憲民主・国民・社民会派の修正案については、大気汚染濃度の測定の義務づけ、第三者による事前調査と完了検査、財政的支援等必要な措置が定められていることから賛成といたします。
以上です。