197-衆-農林水産委員会-9号 平成30年11月27日 漁業法について質問 田村貴昭

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
法案について質問します。
漁業者の九四%は小規模沿岸漁業者であります。その沿岸漁業者に対してどれだけの説明を水産庁は行ってきましたか。


○長谷政府参考人 漁業者への説明につきましては、水産政策の改革の内容や改正法案の考え方等につきまして、漁業者団体の開催する会議などさまざまな機会を通じて説明を行ってきておりまして、本年六月から十月末までの間に全国各地で九十九回の説明会等を実施してきたところでございます。


○田村(貴)委員 しっかりと説明されてきましたか。法案について、九月以降、水産庁の公式の説明会は、東京、大阪、福岡のわずか三会場であります。福岡の説明会に参加した方からお話を聞きました。かなり荒れた説明会になった、十三時から十六時までの予定であったんだけれども十七時過ぎまで延びた、参加者から反対と言って席を立つ者も出た、漁業者のことを理解していない声もあった。納得していないじゃないですか。
吉川大臣にお伺いいたします。
本会議での私の質問に対して大臣は、現場の漁業者の皆さんの不安や不満の声にしっかり向き合い、丁寧な説明に努力してまいりたい、そう答えられました。これから具体的にどうされるんですか。それから、不安や不満の声と言ったのは、どういったことを指しているんでしょうか。教えてください。


○吉川国務大臣 ただいま水産庁長官も答弁をいたしましたように、十月末までで九十九回の説明も行ってきているところでもございます。
この説明会の中で、例えば、海面利用制度の見直しに関して、適正かつ有効の判定は誰がどう判断するのかとか、地元の漁業者や漁協ではなく資本力のある企業による漁場利用を目指すのかとか、さらには、不安や不満の声があったと承知もいたしているところでございます。
このために、法案の内容やその運用に関しましても、国会において御審議をいただくのはもちろんでありますけれども、今後も引き続き説明会を実施をしていきたいと思っておりますし、全国の浜の皆さんの要望に応じて説明会に出向くことも考えております。そして、漁業者の皆さんの不安を解消した上で、この改革を実行できるように努めていかなければならないと存じております。


○田村(貴)委員 私、先ほど福岡の例を申し上げましたけれども、私自身も、今度の提案というのは、これは漁協と漁民にとっては大変な問題だと思い、私もできる限り声を聞いてまいりました。
宮崎県にも行きました。漁協にも行ってきました。長崎県対馬の漁協にも行きました。沖縄県にも行きました。北海道にも赴きました。宮城県にも行ってまいりました。どこでも単位漁協から出てくる声、県漁協でも、よくわからない、これから聞くところ、知らない、こういう声が多数なんですよ。議員の皆さんの地元でもこういう声があるんじゃないですか。
ある漁連の会長さんは私に対してこうおっしゃいました。私どもも十分に中身を理解しているわけではありません、詳細わからないことが多いのです。長官、これは今月の話です。
私は冒頭、千の小規模沿岸漁協があると。小規模沿岸漁協の数が千あるんだったら、千の組合長があるんですよ。私は、沿岸漁業者にどれだけ説明しましたかと聞いたんですけれども、こうした千の組合長はこの話を聞いているんですか。そして、説明をされてきたんですか。いま一度お答えになっていただきたいと思います。


○長谷政府参考人 委員から御紹介ありました福岡の会議自体、私、出席しておりませんけれども、席を立ったと言われるその組合長さんもよく存じ上げているところであります。漁師かたぎの方でありまして、その場では席を立たれたというのは事実でありますけれども、その後、職員をその組合長さんのところにも一度ならず派遣しまして補足の説明をして、御理解を得る努力をしているところでございます。
先生から何件か出ました。宮崎につきましては私自身が行くことができまして、県下の組合長さん、組合の職員さんたちに対しまして直接説明をさせていただいたところであります。
説明が、それはある意味切りがない部分がございますけれども、これまでも努力してまいりましたし、これからも、この改革の趣旨が浜に届くように、理解が得られるように、また、全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに思いますし、個々の漁業者につきましては、我々もやっておりますし、全漁連さんの方でも広報媒体を使って各漁協への情報発信というのもされているところであります。
そのほか、私どものホームページに動画も載せまして、いろいろな形で、浜に届くようにこれからも努力していきたい、しっかり取り組んでいきたいと思っております。


○田村(貴)委員 漁獲規制というのは、クロマグロのときのように、沿岸漁民の死活問題にかかわる問題ですよ。それから、区画漁業権などにおける企業の参入、この付与については、七十年間の浜の人たちの生活、なりわい、これらにかかわる重大問題ですよ。既得権にかかわる重大事項ですよ。本法案というのはそれほど大きな重みがあるんですよ。だからこそちゃんと説明すべきじゃないかというのに、切りがないというのはどういうことですか。これは重大発言ですよ。取り消しますか。
その前にもう一問。私が聞いているのは、千の単位漁協があって、千の組合長がいるんだったら、せめてその組合長さんは知っているのか、説明したのかと聞いているんですよ。その事実だけ言ってください。
撤回しますか、今の話。


○長谷政府参考人 不適切な発言だったと思います。取り消させていただきます。
千の漁協、各県ごとに、あるいはブロック単位でお集まりいただいてそこでの御説明をしているということでありますし、先ほど、動画でありますとか全漁連さんの広報媒体等も含めまして、個々の漁協、漁業者への周知を図っているところでございます。


○田村(貴)委員 まあこういう調子ですから、漁協の方も漁民の方も、水産庁が言っていることが信用できないよという意見が出てくるのは当然なんですよ。
大臣の先ほどの答弁で、いみじくも大臣言われました。今後も説明していくと。納得しているんだったら説明する必要はありませんよね。
そして、どういう不安や不満の声が出ているのか。適切かつ有効な判断は誰がするのか、まさにこの法案の根本的な問題です。それから、資本のある者が漁場を利用していくのか、こういう不安が出ている。まさに本質的な疑問や声が出ているわけですよ。その声が払拭できていない。現在進行中です。ですから、やはり説明があると認めたんです。理解が得られているんだったら再説明の必要はないわけですから、漁民、漁協の理解は今の時点でも全く得られていないということであります。
私は申し上げたいと思います。こうした法案は一旦取り下げて、漁協と漁民の声を聞くところから始めたらどうかというふうに思うわけであります。
時間がありません。次の質問に移ります。
地元漁業者が適切かつ有効に活用している場合は継続して地元に漁業権を与えるとこれまで水産庁は述べてまいりましたけれども、この適切かつ有効に活用との判断は知事が行います。具体的な基準は、これは国において策定するんでしょうか。ガイドラインみたいなものをつくるんでしょうか。


○長谷政府参考人 適切かつ有効に活用している場合とは、漁場の環境に適合するように資源管理や養殖生産を行い、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように漁場を活用している状況と考えております。
具体的には、個々の事案ごとに、地域の漁業に精通する都道府県が実態に即して判断することとなりますけれども、都道府県によって判断の基準が大きく異なることがないようにする観点から、法案成立後、国が技術的助言を定めて、適切かつ有効の考え方を、都道府県の意見もお聞きした上で示していく考えでございます。
なお、個別の漁業権の付与に当たりましては、事前に既存の漁業者等の利害関係者の意見を聞いて検討を加え、その結果を踏まえて海区漁場計画を策定しなければならないこと、地元の漁業者が主体となる海区漁業調整委員会の意見を聞かなければならないこととしていることから、適切に行われるものと考えております。


○田村(貴)委員 そんな大事なことを今から決めていくんですよね。
先ほど大臣が答弁されましたよね。適切かつ有効に活用、この判断、誰が決めるのか。これは漁民から今沸騰しているわけですよ、漁協から。この一番大事なところの判断基準というのは今からつくっていく。そんな大事な基準も示さず議論しろと言われるのは、本当にできませんよ。
具体的に確認しておきたいことがあるんですけれども、法案六十二条二項、海区漁場計画、条文では、漁場の位置、漁業の種類、個別漁業権か団体漁業権かの区別を決定しなければいけないとしています。
既に公示の段階で漁場が個別漁業権と設定されたら、団体漁業権を求めて漁協などが申請しても、その時点ではもう意味がないのではありませんか。いかがですか。


○長谷政府参考人 本法案におきまして、海区漁場計画の作成に当たりまして、あらかじめ利害関係者の意見を聞いた上で、区画漁業権については、個別漁業権又は団体漁業権の別を定めるものとしております。
その際、漁業関係者を主体とする海区漁業調整委員会の意見を聞くこととしており、その区別の妥当性についても判断されることとなっております。
このため、既に計画の公示段階において設定する漁業権が個別漁業権と定められている場合には、団体漁業権を求めて申請することはできず、また、逆に計画の公示段階において設定する漁業権が団体漁業権と定められている場合には、個別漁業権を求めて申請することはできませんけれども、いずれにしても、事前に必要な調整は行われるものと考えております。


○田村(貴)委員 それでは納得できませんよ。
利害関係者の意見を聞かなければいけないとしていますけれども、これは努力義務なんですよ。聞いてその判断に従うんじゃないんです。海区漁業調整委員会は、公選制を廃止して知事が指名するわけでしょう。だから、知事の恣意的判断というのがこの条文では入るんですよ。入り込むすきがあるんですよ。
知事の恣意的判断は十分働くことがあるんじゃないですか。漁協の意見は聞いたんだけれども、知事が地元漁業者が漁場を適切かつ有効に活用していないと判断したら、個別漁業権の付与が権限によって可能であるたてつけになっているわけです。長官、聞いていますか。聞いてくださいね。
地元漁業者が漁場を適切かつ有効に活用していないとあくまでも知事が判断したら、個別漁業権の付与が権限によって可能である、公示の段階でそういうたてつけになっているじゃないですか。だから、知事の恣意的判断が動くことは十分あり得るんじゃないですか。こういう場合もあるんじゃないですか。どうなんですか。


○長谷政府参考人 六十三条の問題であります。
漁場の活用の現況及び漁場計画の案について出された意見の検討結果などに照らしまして、団体漁業権として区画漁業権を設定することが当該区画漁業権に係る漁場における漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合には、団体漁業権として区画漁業権が設定されるということもあるという仕組みになっているところでございます。


○田村(貴)委員 何だかよくわからないけれども、逆も真なりですか。
つまり、やはり、適切かつ有効な活用というのは余りにもいいかげんな概念だ、そういういいかげんな概念のもとでこの法律をつくるから、これだけ誤解とそれから疑問を招いているというふうに言わざるを得ません。
漁業権の付与に係る問題、そして、漁協がこれまで営々として取り組んできたことを今から変えていく、それを納得させるには余りにも無責任なたてつけになっているというふうに思うわけであります。
もう一問伺います。法案六十三条一項三号、海区漁場計画の要件についてです。
条文では、「海区漁場計画は、次に掲げる要件に該当するものでなければならない。」とした上で、一項三号で、「活用漁業権が団体漁業権であるときは、類似漁業権が団体漁業権として設定されていること。」というふうにあります。つまり、これは、漁協の中で団体免許を受けている養殖企業は漁協を脱退して個別漁業権を取得することは不可能である、そういうふうに理解してよろしいですか。同一漁場を使う限り、将来にわたって漁協組合員として漁場を再利用する以外に選択肢はないというふうに私は読みましたけれども、それでよろしいですか。


○長谷政府参考人 本法案におきましては、既存の漁業権者が水域を適切かつ有効に活用している場合には、その者に優先して免許する仕組みとしたところでございます。
このため、団体漁業権を受けた漁協が適切かつ有効に水域を活用している場合には、漁協の組合員たる養殖業を営む企業ではなく、その漁協に優先的に免許が行われることとなります。
他方、団体漁業権を受けている漁協が免許を要望しない場合や水域を適切かつ有効に活用していない場合などにおきましては、海区漁場計画において個別漁業権として定められることとなる可能性はあるということでございます。


○田村(貴)委員 それは確認しました。
いずれにしても、地元漁業者が漁場を適切かつ有効に使っているか使っていないか、ここの判断になってくるんですよ。この判断の基準がないことがやはり大問題だというふうに指摘をしておきます。
さきの国会で、私は、FAO、責任ある漁業のための行動規範、それから、SDGs、小規模漁業に関する記載について質問しました。
長官は、我が国は、これらの規定について、いずれも合意した上で真摯に対応してきているところでありまして、責任ある漁業国として、資源管理を行うに当たって小規模漁業者への配慮を行うことは重要であると認識しています、このように答弁されました。
今も変わりはないと思いますけれども、大臣にお伺いしたいと思います。
十一月二十日、国連総会第三委員会で、小農と農村で働く人びとの権利に関する国連宣言が採択されました。これは重要な宣言であります。この宣言には、小規模漁業者が自然資源にアクセスする権利も含まれて、FAOそれからSDGsの記述とも合致してまいります。来年からは、国連家族農業の十年が始まります。これには漁業も含まれています。このように、家族経営の小規模沿岸漁業を保全するということは、二重三重に国際約束となっているところであります。
大臣、沿岸漁業というのは、ほかの漁業と異なった特別の役割があります。特別な配慮が必要ではありませんか。小規模沿岸漁業を大切にすること、資源管理を行うに当たってちゃんと配慮する、これが大事だと思いますけれども、大臣の御認識を伺います。


○吉川国務大臣 委員お尋ねの規定は、いずれも、漁業者、とりわけ小規模漁業者への配慮の重要性を規定したものであると承知をいたしております。
我が国は、これらの国際的な枠組みに対しまして、いずれも、合意した上で真摯に対応してきているところでもあります。
今後とも、今御指摘のありました沿岸漁業を中心とする小規模漁業者の安定的な操業あるいは経営安定が確保されますように、財政措置、資源管理を含めて水産政策全般にわたって配慮をしてまいりたいと存じます。


○田村(貴)委員 小規模沿岸事業者は配慮する、大切だと言われるんだけれども、声を聞いていない。そして、法案の中身は小規模沿岸漁業者の利益に反する形になっている。このことを指摘して、きょうの質問を終わります。