198-衆-農林水産委員会-15号 2019年5月29日 日米貿易交渉 大幅譲歩迫られた 説明を

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

最初に、G20新潟農業大臣会合について、吉川大臣にお伺いします。
新潟農業大臣会合が、今月十一日、十二日に新潟市で開かれました。最終日に農業大臣宣言が採択されました。宣言文の二の八では、家族農業、小規模農家、女性、若者を特記して、彼らをエンパワーする、つまり強化、支援するというふうにされました。また、この点で、家族農業の十年に留意するというふうに宣言文では明記されました。私は、この新潟農業大臣会議の宣言を高く評価したいというふうに思います。
そこで、大臣にお伺いします。
宣言採択を踏まえて、国内の家族農業、この家族農業は漁業も林業も含むものと考えますけれども、家族農業、小規模農家、女性、若者に対する重点支援に向けた決意についてお伺いをします。


○吉川国務大臣 G20の新潟農業大臣宣言におきましては、家族農業や小規模農家、女性、若者を含む全ての関係者の相互利益のために、これら関係者がイノベーション及び知識を最大限活用できるようにすることで、各国のフードバリューチェーンが包摂的で公正な形で発展していくことを追求することとし、その際、国連家族農業の十年に留意するとされるなど、家族農業等の重要性について言及をしているところでございます。
我が国におきましては、家族経営体が農業経営体全体の約九八%を占めております。平均経営面積が二・五ヘクタールと小規模である現状を踏まえますと、家族農業や小規模農家は、地域農家の担い手として重要であると考えております。
このため、家族農業や小規模農家も含めまして、経営改善の意欲のある農業者でありますれば、規模の大小、法人、家族の別にかかわらず支援をしているところでございまして、基幹的農業従事者の四割を占める女性が活躍できる環境づくりとして、女性農業者の活動を支援するプロジェクトを行うほか、新規就農希望の若者への資金交付等の支援も行っているところでもございます。
これらの取組を総合的に推進することによりまして、G20新潟農業大臣宣言の趣旨を踏まえて、今後とも、多様な農業者の意欲的な取組を後押しをしてまいりたいと存じます。


○田村(貴)委員 わかりました。
そういう大臣宣言の中身、家族農業、小規模農家、女性、若者、大臣からは、しっかりと支えて、そして支援をしていくという決意が述べられたところであります。
だから、私は、日米貿易交渉も毅然とした立場で臨んでいただきたいということで、二十七日の日米首脳会談についてもお伺いをします。
首脳会談冒頭で、トランプ大統領は、日米貿易交渉について、恐らく八月に両国にとってとてもよいことが発表されると語ったのであります。安倍総理の顔を立てて、農業分野での交渉が七月の参議院選挙に悪影響を与えないように、新協定の締結を八まで先送りするのではないか、そういう見立てであります。
トランプ大統領の重大発言はたくさん残されました。首脳会談後の共同記者会見では、我々の目標は全ての貿易障壁を取り除くことだと述べたのであります。全ての貿易障壁を取り除くことだ、これは重大であります。大幅に日本側に譲歩を迫っているわけです。トランプ大統領の要求を丸のみしたのではないかという疑いも生じているわけであります。
先ほども議論があったというふうに思いますけれども、安倍首相とトランプ大統領とのゴルフの後で、トランプ大統領がツイートしています。日本との貿易交渉で大きな進展があった、農業と牛肉が重点的な対象だ、多くは日本の七月の選挙後まで待つことになるだろうが、そこでは大きな数字が予想されると。
恐らく、ゴルフのときにいろいろなお話が出た、そのことを大統領はツイートしたということなんですけれども、もしその話合いの内容が、日本政府側が求めるTPPの範囲内での合意ならば、トランプ大統領がわざわざこういうツイートをする必要はないわけなのであります。農業と牛肉で日本側が大きく譲歩したのではないかと、誰もがこのツイートを見て思うわけであります。
大臣にお伺いします。
農業と牛肉が重点の交渉で、大きな進展があり、大きな数字が発表される。この大きな数字というのは何なのか、みんながこのことを心配しています。牛肉の関税を限りなく撤廃するという要求がなされているのか、安倍総理からどういう報告を農水大臣としてお聞きになっているのか、この場で説明をしていただけませんでしょうか。


○吉川国務大臣 五月の二十七日に行われました日米首脳会談におきましては、昨年九月の日米共同声明に沿って、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で議論が進められていることを両首脳が歓迎し、日米ウイン・ウインとなる形での早期成果達成に向けて、日米の信頼関係に基づき、議論を更に加速させることで一致したもの、このように承知をいたしております。
昨年九月の日米共同声明において、農林水産品については過去の経済連携協定で約束した内容が最大限との日本の立場が日米首脳間で文書で確認をされておりまして、これ以上に私は重たいものはないと承知をいたしております。
日米交渉というのは、これはもう政府一体となって取り組むことになりますけれども、農林水産大臣としての私の責務でありますが、これはもう、日米共同声明を大前提にして、将来にわたって我が国の農林水産業の再生産を可能とする国境措置を確保することでありまして、このため最大限の努力をしていく考えでもございます。
さらに、田村先生から御指摘もございましたが、トランプ大統領のツイッターでの発信につきましては承知をいたしておりますけれども、各国政府要人の発信内容の一つ一つにつきましては、私からお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。


○田村(貴)委員 これは重大問題なんですよ。四日間の滞在の中で安倍首相とのゴルフを楽しまれた後に、喜びの声をもってこういう発信をされているわけですよね。農水省はやはり確かめる義務があるんじゃないですか。こういう交渉の最中に、牛肉と農業で大きな進展があり、大きな数字が発表されると。
では、お伺いしますけれども、選挙後の夏に発表される数字というのは、TPP合意で牛肉は、三八・五%、今は二七・五%ですか、発効されましたので、これを十六年かけて九%に引き下げていくという合意、これ以上のものはないという理解でよろしいんですね。発表される数字がTPPまでというからには、十六年かけて九%まで下げていくこのTPP合意であることをアメリカも認めている、そういう数字が発表されるという理解でよろしいんですね。私は、農業関係者からもそのことについて質問され、それは政府がちゃんと答えなければいけないだろうと思っているので、伺いたいと思います。いかがですか。


○横山政府参考人 ただいま委員から御指摘がありました八月に発表という話につきましては、これはトランプ大統領から発言があったところでございますが、それについて、じゃ、何かということについては、我々としては、お答えをする立場にありません。


○田村(貴)委員 それでは農業者も国民も納得しないですよ。
アメリカはTPPに参加していない、米国はTPPに縛られていないと、そこまで明言しているわけなんですよ。やはり、しかと本意を聞いて、そして、その内容をすべからく国民と生産者に対して、消費者に対してちゃんと説明する義務が私は日本政府に求められているというふうに思います。
安倍首相自身が、記者会見で、私が今聞いたような質問にも答えることができませんでした。日本の農業を左右する重大問題にもかかわらず、農水省もちゃんと確認していない。これではいけないと思います。国民は、選挙が終わって、その発表を待って、従えということなんでしょうか。それでは納得を得られませんよね。
一番最初にお伺いした農業大臣会合のこの大事な実践も、やはり大規模集約化の中で、小さな家族農業、そして小規模農業、ここははじかれてしまうんじゃないか、そういう問題に直面しているわけなんです。
農水大臣、今お答えいただいた以上に日米交渉でお聞きになったことはないということなんでしょうか。確認です。


○吉川国務大臣 先ほどもお答えをさせていただいておりますが、五月二十七日に行われました日米首脳会談におきましては、昨年九月の日米共同声明に沿って、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で議論が進められていることを両首脳が歓迎をして、日米ウイン・ウインとなる形での早期成果達成に向けて、日米の信頼関係に基づき、議論を更に加速させることで一致したものと承知をいたしております。
先ほどから申し上げておりますように、私の立場といたしましては、日米首脳間で文書で確認をされていますので、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限という立場、これをしっかりと、国境措置も確保することも必要でありますので、そういったことについて最大限の努力をしていく考えでございます。


○田村(貴)委員 今度の法案審議に先立って、私、鹿児島県の畜産、酪農農家の声を聞いてまいりました。食肉加工の現場にも入らせていただいて、見せていただきました。生産者の方が、外国の肉が入ってくるから二、三年で安くなっていくだろう、安くなったら若い農家は大変だ、輸入農産物で関税が下がれば子や孫に継がせられなくなってしまうというふうなお話を聞いてまいりました。農家は見通しを持てない状況にあります。
食肉加工品の生産量は最多になりました。しかし、その原材料で見ると、国産の使用割合は二割程度で、低下をしてきた。国産割合が低下している、外国産原料に置きかえられているというような状況があります。食料自給率の向上をうたう一方で、食品加工品向けの原料は外国頼みになっている、これがふえている。現状に対しての認識はどうされていますか。
もう一問。TPPやEPAで関税が下がり、牛肉、豚肉の輸入量がふえています。加えて、日米FTAでそれを超える輸入が拡大されてしまったら、まさに将来に見通しが持てない。こうした農家の声を、私は畜産、酪農家の声を九州で聞いてまいりましたけれども、この声をどう受けとめておられますか。いかがですか。


○塩川政府参考人 では、まず最初の方の質問に対するお答えでございます。
委員御指摘のとおり、牛肉調製品あるいは豚肉調製品の国産シェアは下がっている状況でございますし、また、その原料についても、国産シェアは若干でございますが下がっているところでございます。
農産加工品の関税の引下げや撤廃によりまして、牛肉・豚肉調製品製造業など農産加工業者の経営に支障が生じるおそれがあるというふうに認識しております。
このため、本法では、このような支障が生じる特定農産加工業者に対しまして金融、税制上の支援措置を講ずることによりまして経営の改善を促進するということになっております。
また、本法に基づく計画の承認に当たりましては、地域の農産物の利用の促進又は地域の農産物の特色を生かした農産加工品の生産の促進に資するものであることという要件を課しておりますので、これによりまして、国産農産物の特色を生かした商品開発を通じて輸入加工品との差別化を進め、付加価値の向上を促すことによりまして、特定農産加工業の持続的な発展をしっかり支えてまいりたいというふうに考えております。


○枝元政府参考人 畜産、酪農の今後につきましてお答え申し上げます。
我が国畜産、酪農につきましては、TPP11ですとか日・EU・EPAの発効という国際環境の変化に対応し得る、競争力のあるものとしていくことが必要でございまして、そのことが今後の中長期的発展にもつながるというふうに考えてございます。
このため、現在、TPP等関連政策大綱に基づきまして、畜産クラスター事業、チーズ振興対策などの体質強化対策を講じているところでございます。また、あわせまして、協定発効後の経営安定に万全を期すために、経営安定対策といたしまして、牛・豚マルキンの補填率ですとか肉用子牛生産者補給金制度の保証基準価格の引上げ、加工原料乳生産者補給金の液状乳製品への対象拡大等の措置を実施することなど、万全の国内対策を実施しているところでございます。
足元の動きといたしましては、肉用牛の生産基盤でございます繁殖雌牛の飼養頭数は、平成二十二年以降減少傾向にございましたけれども、二十八年以降三年連続で増加いたしまして、御指摘の鹿児島県においても三年連続で増加してございます。また、乳用牛の飼養頭数につきましても、平成三十、二月時点で前年比五千頭増の百三十二万八千頭と十六年ぶりに増加する等、回復の兆しが見え始めてございます。
農林水産省といたしましては、生産者の方々の不安や懸念に向き合いまして、意欲ある生産者が将来にわたって希望を持って畜産、酪農経営に取り組んでいただけますように、必要な対策をしっかりと講じてまいります。


○田村(貴)委員 時間が参りました。
食料主権を確立するならば、際限のない輸入自由化に歯どめをかけていくこと、そして日本が本当の主権国家としてアメリカと対等、平等の関係を築いていくことが今まさに求められる、そのことを指摘して、質問を終わります。