198-衆-環境委員会-9号 2019年6月7日 動物看護師法案 飼育動物全般対象に

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

まず、提案者に質問します。
今回、動物看護の対象を飼育動物全般とせずに愛玩動物に限定したのは、いかなる理由によってでしょうか。簡潔にお答えいただきたいと思います。


○鬼木委員 我が国の犬及び猫の飼養頭数は現在約二千万頭と推計されておりまして、家族の一員としてかけがえのない存在とされております。また、動物愛護管理法において、動物の飼い主に対しては終生飼養の努力義務が課されており、愛玩動物に対する獣医療の需要は高まっております。
また、愛玩動物の飼い主は、飼養している愛玩動物の看護等について、必ずしも十分な知識、経験等を有しているとは限りません。そのため、愛玩動物の看護及び飼い主等に対する助言その他の支援について、専門的な知識を有する愛玩動物看護師の資格の制定が必要となっております。
これに対して、産業動物については、畜産業者等が産業動物の飼育に関して一定の知識、経験等を有していることが多いと考えられ、産業動物の看護師についての具体的な要望は、現時点では上がっていないものと承知しております。
また、特定動物や実験動物についても、現段階では要望がないものと承知しております。
このようなことから、愛玩動物看護師の業務の対象は愛玩動物に限ることとさせていただきました。


○田村(貴)委員 必要性とその議論については、やはり深めていく余地というのはいっぱいあるわけなんですよね。時間があればちょっと後で指摘したいと思うんですけれども。
獣医師法第一条では、「獣医師は、飼育動物に関する診療及び保健衛生の指導その他の獣医事をつかさどることによつて、動物に関する保健衛生の向上及び畜産業の発達を図り、あわせて公衆衛生の向上に寄与するものとする。」という規定があります。つまり、公益的な役割を定めているところであります。その獣医師の指示のもとに医療行為が許容される愛玩動物看護師においても、獣医師法と同様に国家資格化に値する公益的役割が求められると私は考えますけれども、いかがでしょうか。


○生方委員 田村委員にお答えをいたします。
今回の法律は、愛玩動物看護師の資格を定め、その業務を規律することにより、愛玩動物に関する獣医療の普及及び向上並びに愛玩動物の適正な飼養に寄与することを目的としております。
愛玩動物看護師は、獣医師の指示のもとに診療の補助を行うことを業務の一つとしていることから、獣医師の公益的な役割に貢献し、愛玩動物に関する獣医療の普及及び向上に寄与するものであります。
また、愛玩動物の適正な飼養に寄与することで、動物愛護管理法が目的とする人と動物の共生する社会の実現にも寄与するものと考えられております。
愛玩動物看護師には、以上のような公益的役割があるものと考えております。


○田村(貴)委員 公益的役割があるし、それが追求されなければいけないと。
そうであるならば、やはり愛玩動物看護師は、認定動物看護師以上にしっかりとしたものでなければならないと思います。単にスライドするということであってはならないと思います。
引き続き提案者に質問しますけれども、法案四十条、愛玩動物看護師が担う診療の補助について伺います。
具体的にはどういう行為を指しているのか、そして、それは何に定めるのかについて、説明をお願いします。


○高木(美)委員 お答えいたします。
愛玩動物看護師が行う診療の補助の内容については、提案者といたしましては、獣医師の指示のもとに行う採血、投薬、マイクロチップの挿入、また、カテーテルによる採尿等を想定しております。
診療の補助の具体的な内容につきましては、この法律の施行後、政府において検討されることになりますが、愛玩動物看護師が、診療の補助としてどのような行為ができて、どのような行為ができないのかは、明確にされなければならないと考えます。
例えば、人の看護師が医師の指示のもとに行う診療の補助の範囲につきましては、厚生労働省の医政局長通知等を通じて明らかにされているところです。愛玩動物看護師が獣医師の指示のもとに行う診療の補助につきましても、農水省において、同様の方法により、その範囲が明確にされていくことが考えられます。


○田村(貴)委員 今提案者の方から答弁があった、採血、投薬、それからマイクロチップの挿入、それからカテーテルによる採尿、こうしたことについては、法案のどこにも書いていないわけなんですね。そして、今からこれを決めていくと。伺えば、獣医師会と動物看護職協会との間で今協議中だというふうに伺っております。
そして、医師の指示のもとにといっても、それは医師が立ち会うのか、あるいは電話でも指示は指示として成り立つのか、そうした大事なところが、この法案審議の現時点で示されていないわけなんですね。
農水省においても、これは人医療としてのいわゆるこんな行為ではないかというような提示だと思うんですけれども、そういう意味では、ちょっと生煮え感がある、生煮えになっているんではないかというふうに私は考えるわけであります。
続いて、環境省の方にお伺いをいたします。
法案三十四条、指定試験機関についてであります。
もし動物看護師統一認定機構が試験実務を担う指定試験機関となるのであれば、これは単なる横滑りであります。国家資格試験として、国は、この愛玩動物看護師の国家資格を与えるという試験について、どうかかわっていくんでしょうか。


○正田政府参考人 お答えいたします。
本法案におきましては、「農林水産大臣及び環境大臣は、農林水産省令・環境省令で定めるところにより、その指定する者に、試験の実施に関する事務を行わせることができる。」と規定されているところでございます。
また、農林水産省及び環境省は、試験問題の作成を行う愛玩動物看護師試験委員の要件を定める等により、試験内容が適正なものになるよう担保するとともに、指定した指定試験機関に対し、事業計画及び試験事務規程を認可し、さらに、必要に応じて報告徴収や立入検査を行うなど、試験の実施に関する監督を行うこととされてございます。
これらの規定を踏まえまして、試験の実務がしっかりと進められるよう、制度の適切な運用のために、その役割をしっかりと果たしてまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 しっかり監督の役割を果たしていくということですね。
次に、農水省にお尋ねします。
試験というのは、愛玩動物看護師を目指す全ての受験生にとって公平で公正でなければなりません。例えば、試験委員の選任において、あるいは試験問題の作成等において、いかにして公平性を確保していくか、どのようにお考えでしょうか。


○小川政府参考人 お答え申し上げます。
愛玩動物看護師法案に基づいて行われる試験でございますが、委員御指摘のとおり、公平公正に行われることが必要だというふうに考えてございます。
この試験でございますが、この法案におきましては、農林水産大臣及び環境大臣が指定する指定検査機関に行わせることができることとされておりますが、まず、その指定に当たりまして、法案第三十八条の規定により準用されます十二条でございますけれども、試験事務の実施に関する計画が適正であるといったことが求められておりますし、また、この試験事務を公正に実施することができないおそれがある場合は指定してはならないというふうに規定されております。
さらに、指定試験機関が試験事務以外の業務により試験事務を公正に実施することができないおそれがあるという場合には、三十八条の規定により準用されます二十三条の規定により、指定を取り消さなければならないといった形で規定されているところでございます。
さらに、先ほど委員御指摘がございましたとおり、三十五条におきましては、試験問題の作成あるいは採点を行う試験委員は指定試験機関が選任することとされておりますが、まさに、第三十六条におきまして、試験の問題の作成及び採点について、厳正を保持しつつ不正の行為のないようにしなければならないと規定されており、かつ、第四十六条におきましては、この不正の採点をした試験委員への罰則として、一年以下の懲役あるいは五十万円以下の罰金に処するといったような仕組みになっております。
これらの規定に基づきまして、国家資格試験が適正に行われるよう、農林水産省としても監督してまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 しっかり行うということであります。
提案者にお尋ねします。
愛玩動物看護師の輩出が始まったとして、国家資格を持たない従事者が職場から排除されてしまうのではないかという懸念については、いかがお考えでしょうか。


○小宮山委員 愛玩動物看護師の業務のうち、診療の補助については、現行、獣医師以外は行うことができない業務であるけれども、この法律の施行後は、愛玩動物看護師の資格があれば行うことができるということとなる新しい業務と捉えております。
他方、入院動物の世話そのほかの愛玩動物の看護や、愛玩動物の飼養者等に対するその愛護及び適正な飼養に係る助言そのほかの支援については、愛玩動物看護師でなくても行うことができるとなっております。
このように、国家資格を持たないこれまでの従事者も、現在の業務を引き続き行うことができるため、必ずしも職場から排除されるものとは考えておりません。


○田村(貴)委員 排除されてはいけないと思いますね。ここに対するやはり注視が必要だというふうに考えます。
ちょっと戻るんですけれども、農水省に、獣医師の資格試験については、例えばその質問づくりとか等においてどういうふうに苦慮されているか、努力されているか、そういったことについてちょっと説明していただけますか。


○小川政府参考人 獣医師国家試験につきましては、獣医師法に基づきまして、これは獣医事審議会が実施をする、そして、それを農林水産大臣が監督をするといった仕組みになっております。まさに、第三者機関でございますところであります獣医事審議会が、試験問題の作成委員等と問題の作成といったことにつきまして慎重に作業を進めてきているといった運用を行っているところでございます。


○田村(貴)委員 伺えば、質問づくりを、一人の試験委員には全権を与えないとか、そういった取組を踏襲していきたいというふうに伺っておりますので、そこはしっかりやっていただきたいというふうに思います。
まず、一番最初に鬼木議員から説明があった飼育動物全般についての考え方でありますけれども、獣医師は、獣医師法でその任務を、「飼育動物に関する診療及び保健衛生の指導」というふうに定められており、主に家畜伝染病予防など防疫の第一線に立って公衆衛生に責任を負う立場から、獣医師としての国家資格がされてきた経緯があるわけなんですね。その獣医師の診療補助を行う国家資格の専門職を創設するのであれば、今回、本来は、同様の責務を明確にした上で、飼育動物全般を対象にした動物看護師とすべきであったというふうに考えるわけであります。
そして、これまでBSEがあり、鳥インフルエンザがあり、口蹄疫の問題もありました。今は豚コレラの問題も起こっています。家畜伝染病の発生の際に、産業動物分野における動物看護師の法制度化というのは、そのたび審議されてきたんですね。検討が必要だ、必要じゃないかというふうに、農水省や国会の場でたびたび指摘されてきたわけなんです。ですから、これはやはりこれからも検討していかなければならない。産業動物の獣医師さんが地域偏在がある、足らないところはしっかりあるわけですね。そうした問題とあわせて、じゃ、獣看護師全体の問題もこれからあわせていくという課題は私は残っているというふうに考えております。
さらに、大学とか専門学校におけるいわゆる教育の現場では、診療分野まで含むカリキュラムがこれから導入されてまいります。獣医師それから獣看護師、そうした獣医療を提供するといったところで、ふさわしい水準までその引上げが果たしてちゃんと行われるのかといった課題もあります。
また、国家資格をもって、今の動物病院等の従事者、それから新しく愛玩動物看護師となられる方の賃金が即引き上げられる、処遇が改善されるということについては、まだ何も担保がされていないところであります。
いろいろ申しましたけれども、今度の法提案において、さまざまなまだ検討課題があるというふうに思います。それから、施行に至るまでにしっかりと詰めなければいけないといったところもあります。そのことを指摘して、きょうの質問を終わります。