各地の在日米軍が保有する有害物質PCB(ポリ塩化ビフェニール)廃棄物を防衛省が長年にわたり引き取り、法的根拠のないまま処理を肩代わりしていた問題で、伊藤信太郎環境相は2月28日の衆院予算委員会分科会で今後米軍からの廃棄物を「国内で処理することは想定していない」と明言しました。質問した日本共産党の田村貴昭衆院議員は、米軍に米本土へPCB廃棄物を持ち帰らせるよう交渉すべきだと防衛省に迫りました。(質問動画はコチラ)
現地不安
昨年、防衛省が長年にわたり沖縄県の嘉手納基地や山口県の岩国基地などのPCB廃棄物をひそかに引き取り、国が全額出資するPCB処理施設等で処理していたことが発覚。米軍は2002年に『米本土に搬出する』と約束していたにもかかわらず、処理を防衛省に押し付け、防衛省も法的根拠もなく受け入れていたことが問題となっていました。
さらに防衛省は、これまで持ち込んでいた北九州市など西日本エリアの3処理場が3月末で閉鎖されることを受け、今後は北海道室蘭市の処理場への持ち込みを検討していることも明らかとなり、現地住民から不安の声が上がっていました。
田村氏が同委員会で、「今後PCBが米軍施設内で発見されたとしても日本国内では処理しないということか」と質問したのに対し、伊藤環境相が「想定していない」と断言したことで、防衛省のもくろみが政府内から全面否定された格好です。
環境省の角倉一郎環境再生資源循環局次長は、室蘭の処理場も26年までに処理を完了し閉鎖する見込みだと答弁。田村氏が「日本で処理しないのなら米国に本土に持ち帰らせるしか道はないではないか」と迫りました。
田村氏は「PCB保有者は電気事業法により届け出と廃止が求められ、廃止後にはPCB特措法により自治体へ届け出と速やかな処理が厳しく定められている」と指摘。現在の米軍施設区域内でのPCB含有機器やその廃棄物の残存量をただしても、防衛省は答えられませんでした。
田村氏は「米軍は日本の法律を尊重せず、2002年の約束も守らない。そもそもストックホルム条約も批准していない。基地内に残存している可能性は大いにある」と強調。「なぜ米軍に報告を求めないのか。国外への搬出を要求しないのか」と批判しました。
調査早く
田村氏は、1968年に北九州市で起きた食品公害事件、カネミ油症事件の原因物質がPCBだと指摘し、「PCBに汚染された米ぬか油を食した人が肝臓障害、心臓疾患、骨の変形など多くの症状に今も苦しめられている」と強調。濃度に関わりなく米軍施設内に多量に残るとされているPCB総量を早急に調査するべきだと強く求め、「日本の税金で処理の肩代わりを続けることは絶対に認められない」と主張しました。(しんぶん赤旗 2024年3月4日)