改悪された食品表示 「安全・安心」へ消費・生産・事業者集い

「国内製造」小麦 パンから除草剤 「遺伝子組み換えでない」消える
 
 今年4月から食品表示の新基準が実施されています。安全な食品を選びたい消費者の願いに、応えることはできるのか。4月6日に行われた「食品表示を考える消費者と生産者、事業者の集い」から紹介します。
 
 集いは「食の安全・安心を創る議員連盟」が主催し、全国の消費者団体や生協、市民でつくる「食品表示問題ネットワーク」が協賛して開かれました。オンライン視聴も含め、1490人が参加しました。
 
 同ネットワーク事務局の原英二さん(日本消費者連盟)が、「原料原産地表示」と「遺伝子組み換え表示」の問題点について、報告しました。
 
「大括り表示」で
 
 生産者や消費者の声で、全加工食品に原料原産地表示をすることが実現しました。しかし、原料が3カ国以上から輸入された場合、「大括(くく)り表示」として、単に「輸入」と表示すればよいとされました。(表参照)
 
「韓国では、原料原産地国が上位3位まで表示されています。大括り表示を廃止し、どこからの輸入かわかるよう、表示の拡大が必要です」
 
 原さんが「それ以上にひどい」と指摘するのは「製造地表示」です。原料の産地でなく、中間原料の製造場所を表示すればよくなりました。「たとえば輸入小麦でも、製粉した場所が日本なら『国内製造』と書くことができます。『国産』と非常に紛らわしく、消費者の誤解を招きかねません」
 
 日本消費者連盟と「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」の食パン調査で、「国内製造」と書かれた小麦が原料のパンから、発がん性のグリホサート(除草剤)が検出されています。「国産小麦を使った製品からは、ほとんど検出されていません。輸入小麦と国産小麦では、安全性に大きな違いがあります」
 
「国産選びたい」
 
 消費者庁が調べた消費者の意識調査では「国産を選びたい」との回答が多くを占めています。「原料原産地の表示が正しくされれば、消費者は国産原料の商品を選択できます。国内農業の振興や食料自給にも、つながるのではないでしょうか」
 
 食品によって「遺伝子組み換え(GM)表示」が免除されているものがあります。その一つが食用油です。DNAやたんぱく質を検査する「科学的検証」ができないことが、免除の理由とされていますが、書類等で原料を確認する「社会的検証」をすれば表示は可能だと、原さんは説明します。「EUや台湾では、社会的検証によって食用油等に表示義務を課している。日本でできない理由にはなりません」
 
 4月から「遺伝子組み換えでない」の表示が難しくなります。これまでGM混入率「5%以下」という基準が目安でしたが、「不検出(0・01~0・1%)=少しでも検出すれば表示できない」と変わったためです。
 
 「遺伝子組み換えでない」という表示をするには、事業者自らが不検出である証明をしなければなりません。「万一の混入を恐れ、事業者は自粛します。国産原料の製品でも、すでに『遺伝子組み換えでない』の表示が4割近く消えてしまった」と原さんはいいます。
 
 「国は消費者のためのルール変更だといいますが、遺伝子組み換えでない製品を懸命に追求している事業者が『遺伝子組み換えでない』表示ができないというのは、本末転倒だと思います」
 
必要な法規制を
 
無題 集いには、衆参の国会議員17 人が参加しました。農林水産委員会に所属する日本共産党の田村貴昭衆院議員は「業界団体の利潤追求のために、偽りの表示がまかり通っている。改悪された表示をわかりやすくするのは、国会の責務です。必要な法規制、対策を強めるために頑張りたい」と発言しました。
 
 消費者庁の職員が「皆さんの声を受け止め、勉強する」と繰り返すと、会場からは「私たちが聞きたい回答ではない」との声が聞かれました。食品表示は、安全な食品を選ぶために必要な情報であり、消費者の知る権利を保障するものです。幅広い立場の人の声を集め、改善を求めていく思いを一つにしました。
 
 
参加者の発言から
 
●小学生の子どもがいる母親
 
 お菓子にも「国内製造」という表示が増えたが、「国産小麦」と勘違いした。輸入小麦には高い確率で除草剤が含まれているので、国産を選びたい。買い物する時の指標として、正確な表示が必要だ。
 
●生活協同組合パルシステム東京・常任理事
 
 食品表示の現行制度は、消費者の選ぶ権利や食の安全性を守る上で大きな後退だと思う。表示の義務化や情報公開を求める運動を進めたい。
 
●北海道有機農業組合員
 
 有機農業を続けて31年。有機大豆や小麦など遺伝子組み換えでない農業をしている。でも納豆や豆腐の加工業者が「遺伝子組み換えでない」表示ができないと、消費者に選んでもらうチャンスを失うことになる。
 
●北海道で雑穀の集荷・選別・加工をする業者
 
 国産小麦の普及に努めてきたが、「国内製造」という表示は消費者の誤認を招く恐れがある。国産小麦を適正に選択してもらうため「国内製造」の表記をやめてほしい。
 
●徳島県の水産加工業者
 
 無添加の水産加工を行って27年。どの海域で取れたか、第3位まで書くようにしている。調味料も国産を調達。お客さんに胸を張って説明できる表示を望んでいる。「国内製造」や輸入括りの表示ルールは、地方で丁寧にもの作りをする生産者の存在にかかわる問題だ。(しんぶん赤旗 2023年4月26日)