インボイス 業者深刻 古物商?パチンコ苦肉の策

 昨年10月の消費税のインボイス制度の実施により、あらゆる業界で免税業者の排除など深刻な影響が顕在化してきました。パチンコ業界もその一つです。(村高芳樹・国会議員団事務局)

 
 パチンコは、ゲームをするホールと特殊景品を買い取る景品買い取り所、その特殊景品をホールに卸す問屋で成立しています。インボイス制度が始まると、景品交換所が特殊景品を買い取る際にお客からインボイスをもらえないので、仕入れ税額控除ができなくなります。例えば、1日で22万円(税込み)の買い取りをする景品買い取り所であれば、1日2万円の仕入れ税額控除ができなくなります。年間で消費税の負担が730万円増える計算です。
 
相反する答弁
 
 そこで苦肉の策として、景品買い取り所に消費税の古物商特例を適用して、インボイスなしで仕入れ税額控除ができるようにする動きがみられます。古物商特例とは、古物営業法が定める古物の取引に与える特例で、古物取引ではインボイス番号非登録者や一般個人からの買い取りが想定されるため、帳簿だけで仕入れ税額控除を認める仕組みです。
 
 2月28日の衆院財務金融委員会で、田村貴昭衆院議員はパチンコの景品買い取りが古物の買い取りにあたるのか問いただしました。和田薫警察庁長官審議官は、古物営業法は盗品などの売買を防止することが目的で、盗品などの処分と言えないパチンコの景品は古物ではないと否定。一方で、星屋和彦国税庁次長は「古物に準ずるもの」として古物商特例の適用対象であると答弁しました。これは古物営業法の趣旨に反する適用との疑問が残ります。(質問動画はコチラ)
 
 この古物商特例は、古物営業法を前提としているため、対面取引であることや1万円以上の買い取りでは本人確認や証明書のコピーの保管などの義務が古物商に求められます。田村氏は、1万円未満の景品を複数買うことでこの条件を回避するのでは、と問いました。和田氏は「その物品の対価をすべて足し合わせた額、総額で判断する」と答弁。古物営業法では本人確認義務などの回避ができないことが確認されました。しかしながら、実際にパチンコの景品買い取りで本人確認などを徹底できるのか疑問が残ります。田村氏は「客対応でトラブルも生じかねない」と指摘しました。
 
 また、古物でない特殊景品の買い取りだけでは古物営業法の許可が出ないため、他の場所で実体のある古物取引を繕わねばならず、古物商特例を適用するにはかなりの負担も生じます。事実、小規模なパチンコでは成立しないとの指摘もあります。田村氏は「インボイスを導入したがために無理やりなやり方をしている」と景品買い取り所に古物商特例を適用させようとする国税庁の姿勢を批判しました。
 
制度廃止こそ
 
 一方で、実際に古物取引をしている免税事業者が古物商特例を使えず取引から排除されている事例が発生しているとして、田村氏は、中古車オークションの問題を取り上げました。パチンコの例も中古車の例も、どちらもインボイス制度を導入したから問題が発生したものだと指摘し、インボイスの廃止を求めました。(しんぶん赤旗 2024年3月13日)