種苗法「改正」の問題点 田村貴昭衆院議員に聞く(上)

119095351_2672933902809581_5321753259596007039_n (2) 政府・与党は今の臨時国会で、前の通常国会で継続審議とされた種苗法「改正」案を成立させようとしています。法「改正」について、日本共産党の田村貴昭衆院議員・農林水産部会長に聞きました。(聞き手・北川俊文記者)
 
 

農家の自家増殖を原則禁止

 
―種苗法とはどんな法律で、「改正」案はどんな内容ですか?
 
 種苗法は、米や野菜などの新品種を開発して登録した場合、開発者の知的財産権を保護する法律です。種苗法では、育成者権といい、生産・販売する権利が与えられます。
 
 同時に種苗法は、農家が購入した種や苗を育て、収穫して翌年、再び自分の農地で種苗として使うことは認めています。これを、自家増殖といいます。
 
 「改正」案では、登録品種については自家増殖を原則禁止とし、登録期間の25年または30年の間は、許諾料を払わなければならなくなります。
 

流出防止はごまかし

 
 農家からは、「自家増殖が禁止になって、種苗を毎年買うことになったら、もう営農はできない」という声が上がっています。
 
―「改正」は、優良品種の違法な海外流出を防ぐためだといいますが?
 
 海外流出の防止を理由にするのはごまかしです。「改正」案でも、違法な海外流出を防げません。流出した種苗の生産をやめさせるには、海外で品種登録するしかありません。
 
 シャインマスカットが中国や韓国で「無断」栽培されていると伝えられていますね。それは、開発者である日本の政府がそれぞれの国で品種登録をしなかったからです。政府の怠慢を棚に上げて、自家増殖を原則禁止とするのは、お門違いです。
 
―農林水産省は、自家増殖が禁止されるのは登録品種で、一般品種は対象外であり、大半の農業者に影響しないといいますが?
 

正確に影響把握せず

 
 実は、農水省は、生産者がどれだけ影響を受けるのか、正確に把握していません。
 
 例えば、農水省は、稲作で登録品種は17%しかないといいます。しかし、実際はもっと多いのです。最も作付面積の大きい「コシヒカリ」は、育成者権がない一般品種だとされます。ところが、「コシヒカリ」には「コシヒカリ新潟BL」などの登録品種も含まれます。それを登録品種に加えると、17%より多くなります。
 
 また、特産物に力を入れている地域ほど登録品種が多く、影響が大きくなります。例えば、ブドウでは、農水省は、登録品種は9%ほどだといいますが、山形県では、大粒種だと56%に上ります。北海道の小麦は99%、大豆は86%が登録品種です。沖縄県のサトウキビは半数以上が登録品種です。
 
―どのぐらいの数の農家が自家増殖をしていますか?
 
 2015年の農水省の実態調査では、聞き取りを行った1000戸余りの農家のうち、登録品種を使って自家増殖する農家は全体の約5割にのぼります。これらの農家は、「改正」によって、新たな負担が増える可能性があります。
 
 特に、有機農業や自然農法では自家増殖する農家の割合が高いはずです。正確に調査し、これらの農家の意見を聞くべきです。(しんぶん赤旗 2020年11月5日)