軽石直撃 与論島民の生活窮地 島の危機支援必要 田村貴昭議員調査 鹿児島

山町長と懇談する田村議員(左端)と懇談する田村議員(左端)=15日、与論町役場 (2)出漁できない ■ 山積み捨て場ない
 
 絶景ビーチで知られる鹿児島県の与論島。県最南端に位置し、沖縄本島に最も近いこの島にも、海底火山の福徳岡ノ場噴火による軽石が押し寄せ、大きな被害が出ています。日本共産党の田村貴昭衆院議員が11月15、16両日、現地を訪問し、被害状況を調査しました。島内の海岸の被害状況を視察したほか、山元宗(やまもとむね)与論町長や漁業者と懇談しました。
 
ビーチ台無し
 
 約2キロにわたって真っ白な砂浜が続く人気のビーチ、大金久(おおがねく)海岸。大潮の日の干潮には、ヨロンブルーの海の中に、幻の砂州・百合ケ浜が出現する、絶景ポイントです。
 
 ところが田村氏が現地を訪れると、砂浜の全域にわたって真っ黒な軽石が漂着。人気のビーチが台無しになっていました。
 
 地元のマリンスポーツのスタッフは、「サーフボードやウインドサーフィンのセールを傷つけ、初心者には危ない。このままでは成り立たない」と話しました。
 
 山町長は「島の北、西、東側に軽石が押し寄せた。島を取り囲むサンゴ礁の内側に入り込んで出ていかず、大量に漂ったままになっている」と状況を説明。「船舶は取水口に軽石が入ってエンジン冷却に支障が出る。発電用の重油のタンカーが接岸できず、島民生活が危機に陥った。今日(15日)ようやく接岸できて補給できたが、1カ月半しかもたない」と窮状を訴えました。
 
 また山町長は、除去した大量の軽石が山積みになっており、捨てる場所もないとし、「塩分も酸性度も強く、土壌改良にも使えない。このままでは強風で飛ばされ、陸上にも被害が出かねない」と、活用・処分方法について国の早急な対応を要望しました。
 
 田村氏が軽石を野積みしている現場を訪れると、町のトラックが軽石を大量に運び込んでいる最中でした。山積みの軽石は砂のように細かくなっている粒もあり、容易に風に舞うことが予想されました。
 
費用補償なし
 
軽石被害を調査 漁業者から聞き取り (3) 16日には、与論町漁協に所属する漁業者が10人ほど集まり、田村氏と意見交換しました。
 
 ソデイカ・マグロ漁師の男性(41)は「いまは年間の半分の水揚げを占めるソデイカ漁の時期。昨年は500万円の水揚げが今年はいまだ出漁できない。漁業共済は入っているが、出漁できないと共済金が減らされる。柔軟な査定をしてほしい」と訴えました。
 
 別の漁師さんは「漁船保険でカバーされるのはエンジンなどが完全に壊れた場合だけ。軽石が詰まった取水口のフィルターの掃除や、改造費用は補償がない。なんとか支援を」と話しました。
 
 西武雄組合長は「漁船の7割が出漁できない。漁だけで生活する50人が窮地に陥っている」と説明。「共済に入るお金がない若い人、小さい船の人はさらに厳しい。コロナ対策の経営継続補助金のような支援を緊急に行ってほしい」と要望しました。
 
 調査を終えた田村議員は、「改めて軽石の量に驚かされた。除去や処分をするにも、生業(なりわい)を守るためにも、国の支援が欠かせない。既存の制度にとらわれない、国の支援が必要だ」と訴えました。(しんぶん赤旗 2021年11月18日)