【農林水産委員会】森林組合法改正案は山村過疎化につながる/経営継続補助金の柔軟運用求める

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
コロナ禍の渦中において、生産者が大変困窮状態にあることをたびたび取り上げてまいりました。
大臣、大分県の竹田の肉牛農家の話も伺ったので、少し紹介したいと思います。
子牛の価格が去年の五月に比べて二〇%下落、十七万円安、六十三万円になってしまった、これを機会にもう繁殖をやめようという農家が出てきそうだ、後継者のいない高齢者の農家にとっては、これは特にそうだということを、生産農家の方も、それからJAの方もおっしゃっているということであります。困難に直面している全ての農家に、経営を下支えする、そういう対策が今喫緊に求められています。
そこで、お尋ねします。
本日は二次補正が閣議決定されます。そして、農水省からは新しく経営継続補助金というものが出されるというふうに伺っております。農業者向け持続化給付金とも言われているのです。ならば、持続化給付金を超えて生産者が利用しやすいものにする必要があると思います。
一つ例を申し上げたいんですけれども、南関東のある和牛農家です。一月に牛二頭を出荷して二百万円でやってきたんですね。ところが、今回、五頭出して二百万円なんですよ。五頭出して二百万円得ないと、次の経営にお金がない、飼料代を含めて。ですから、やむにやまれぬ出荷だったんです。ところが、前年同月と比較したら、二百万、二百万で変わらないから、持続化給付金の対象にはならない、こういう結果になっておるんですよね。
これは制度内でも、私は工夫したら給付されるものと思っているんですけれども、だからこそ、経営継続補助金、その名前が経営継続ですから、経営ができないという農家がいるわけですから、こういう補助金を全面的に適用できるように制度設計していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。


○江藤国務大臣 竹田の例を引いていただきましたけれども、宮崎でも同じような下落率で、大変なことになっております。
今度の補正につきましては、前回の一次補正では肥育農家について一定の対策を打たせていただきましたが、繁殖農家についても対策を打たせていただこうと思っております。追って御報告させていただきたいと思います。
今後設定されます、仮称でありますけれども経営継続補助金につきましては、基本的には持続化給付金については、対象にはなると思っています。一月十五日が締切りでありますから、農業の場合は、昨年の一年の収入を十二で割って、ことしの一月から、今からこの一月十五日までの間で二分の一になれば対象になりますから、やりようによってはかなりの確率で、私はもう九割以上を軽く超えると思いますけれども、給付金の対象になると思います。
しかし、さらに、この補助金の方は、いわゆる小規模な事業者を対象、二十名以下ということでございますけれども、そういうことになると、農林水産関係にかかわる人は、大規模な農家はおられますけれども、繁殖でもおられますけれども、大体もう九九%近い人が数字の上では対象となるというふうに計算されておりますから、対象が幅広く、できる限り漏れがないように、これが給付できるように工夫をしたいと思っております。


○田村(貴)委員 兼業農家の農業収入が減少した、そういう事例にも機敏に対応していただきたいというふうに思います。
農水省にお伺いしますけれども、この経営継続補助金、二百億円の予算額というふうに聞いていますけれども、これ、一件百五十万円として、一万三千件分ぐらいですよね。大丈夫ですか、足りますか。足りなくなったらどうしますか。お答えいただけますか。


○横山政府参考人 お答え申し上げます。
まず、兼業農家も含めての対象とはなり得るものだというふうに思います。それを前提に、ちょっと予算額の方は、まさにこれから閣議決定ということでございますし、今の段階で、足りる足らないというところ、なかなかお答えすることが難しいということは御理解いただきたいと思います。


○田村(貴)委員 多分、引き合いも申請も多いことは間違いないというふうに思いますよ。万全の策をとっていただきたいと思います。
それでは、法案について、森林組合法の改正案についてお伺いします。
林業は、未来投資戦略、いわゆる官邸農政によって、川下の大規模な製材企業への供給を図るために、この間、短伐期皆伐の方針がとられてきています。大規模伐採が広がる中でたくさんの問題が生じています。その一つが造林未済地のことであります。
資料をお配りしています。造林未済地の農林水産省の資料です。都道府県別に数字が出ていますけれども、これは三年ごとの調査で、平成二十六年、二〇一四年から、平成二十九年、二〇一七年までの三年間、全体で二千五百二十八ヘクタールも増加しています。これは再造林を放棄している、再造林放棄地とも言われる数字であります。
伐採しても植林をしない、これはだめですよね。なぜこういうことになっているんでしょうか、その理由を端的に教えてください。


○本郷政府参考人 お答えを申し上げます。
造林未済地の発生につきましては、今委員御指摘のとおりふえているところでございまして、これは林業採算性の長期低迷や経営意欲の低下等により発生しているものと考えております。


○田村(貴)委員 十四日の参議院先議、我が党の紙智子議員の質問にも、局長、そういうふうにお答えになりました。
実は、これ、今から十三年前の二〇〇七年、我が党の赤嶺政賢衆議院議員の質問主意書に対しても同じような答弁なんですよ。木材価格の低迷による森林所有者の経営意欲の減退等によって、伐採後も造林されない森林が発生している、そういうふうに承知しているというのが答弁でありました。
戦後の林業政策というのは、森林資源を枯渇させて木材の輸入自由化を招き、材価を低迷させました。森林所有者にとって、木材価格の低迷は今も昔も変わらないんですよね。造林未済地、この数字があらわすところ、増加しているということは、有効な山元に対する手だてが打たれてきていない、その証左ではありませんか。
これは法改正でこの状況を変えることができるんでしょうか。


○本郷政府参考人 お答えを申し上げます。
地域の林業経営の重要な担い手である森林組合が、山元への一層の利益還元を図りながら、組合員の再造林の意欲を高めるということのために、今回の法改正の仕組みも重要な対策というふうになると考えております。
特に、安定供給をすることによって丸太の値段を確保する、有利に販売するということが非常に重要な点だというふうに考えておりまして、そういうことを取り組みながら、造林未済地の解消にもつながるよう、今回の法制度の活用に取り組んでまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 今おっしゃった安定供給体制の構築というのは、どこに対する安定供給なのかという話ですよね。これは、川中、川下への大量、安価、安定供給を前提としたものではないんですか。そういう流れでずっとやってきていますよね。経営森林管理法、森林法から、国有林から。私、この流れがある限り、やはり山元還元というのはなかなか難しいと思いますよ。
大臣にお伺いします。
農林中金の二〇一七年総研レポートで、全国の組合に対するアンケートが紹介されています。再造林を実施しない理由について。どういう回答なのか。木材価格が安定、回復しないが一九%、造林費用を賄えないが五四%、造林への補助金が少ないが二三%。ここに森林所有者の苦悩があるわけですよね。材価が低いから、低迷しているから、再造林できない。この主要因があるわけです。
ですから、森林保有者における価格支持対策、そして価格向上政策に本気で取り組まないといけません。そうでないと山の荒廃は一層ひどくなると思いますけれども、大臣、手だてをとるべきじゃないですか。


○江藤国務大臣 最低価格を、例えば子牛のように補給金単価を決めて、五十四万一千円とかそういう単価が決められておりますけれども、そういう制度の導入をしたらどうかという議論は、私がこの職につく前も、議員になってからずっとされてきたことでありますけれども、なかなか、正直なところそれは難しいと思います。
そして、やはり、今回の法改正の趣旨として、いろいろな合併のやり方というものをお示しをさせていただきましたけれども、やはり、供給元に対して価格交渉力を持つには、ある程度のロットをまとめる、そして、相手の買い手にしてみれば、欲しいときに欲しいだけのものが手に入るということが求められます。それを満たせばこっちも高い値段で売ることができる。
やはり、我々の林業は、ホワイトウッド集成材とか外国の木材にやられてきたこの歴史をたどると、国内のいわゆる住宅メーカーなんかも、そういった外材に頼った方が安定的に画一的な製品が、製品的にも収縮が少ないとか曲がりが少ないとかいう材が安定的に供給される体制があるので、国産材よりもホワイトウッド集成材の方が高いけれども、やはりそちらを使うという現状がありました。
ですから、そういうものを解消するためには、CLTの技術開発とかさまざまなことがありますけれども、やはり、森林組合も、今までの合併一本やりではなくて、さまざまな事業の連携の仕方を構築しながら価格交渉力を持っていくことが全体の利益につながっていくことではないかというふうに考えております。


○田村(貴)委員 だけれども、それだったら造林未済地の問題は解決できないじゃないですか。宮崎県、どうなっていますか。この表にもありますけれども、七百五十九ヘクタールもありますよ。三年間で三・六倍にもなっていますよ。全国素材生産業協同組合の連合会、会長さんは宮崎県出身ですけれども、宮崎では切れ切れという状況でやってきたと。この短伐期主伐の方針で、やはり山がはげ山になっている、そして山元に利益が還元されていない。災害を誘発する大問題が今や引き起こされているわけですよ。
次に、大臣、やはり主伐を改めなければいけないという問題について、一問聞きます。
コロナ禍が続く中で、大雨の季節が迫ってまいりました。地震も各地で起こっています。切れ切れの号令のもとで、皆伐、無植林、そして路網放置が進めば、土砂災害は避けて通ることができません。短伐期皆伐の方針を改めて、適切な間伐、自伐型林業者などが行っている、大雨にも耐え得ることができる壊れない山道、こうした方式に、やはり災害対策一つとっても、林業の施業のあり方を変えていくべきじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。


○江藤国務大臣 施業のあり方として、林道であったり作業道、特に作業道ですけれども、その作業道のつけ方が非常に雑であるがゆえに、山に降った雨をしっかりと流すことができない、山地崩壊につながっているという現状は、私は確実にあると思います。
そして、基本的には、林野庁としましては、伐採後には必ず植林をしてくださいということで指導してまいりました。ですから、苗木に対する補助も六八%という高い補助率でやらせていただいておりますし、そして山での施業についても補助をさせていただいております。
しかし、先ほど先生から御指摘があったように、補助金がまだ足りないんじゃないか、それから、材価が安いから手元にお金が残らない、残らなかったお金の中で、さらに、国の補助が七〇%近くあっても、三割は自己負担をかけながら、人件費を分けて、三十年先のためにそう投資はできない、投資をしたら、更に山の手入れも必要になってくるという、やはり、基本的には、山主に幾らの金が残るかということが問題になってくると思います。
しかし、この災害ということを考えると、森林法に基づきまして、森林が求められる機能に応じたゾーニングというものは林野庁は行っております。そして、そこについては、伐採方法についても規範を定めておるんですけれども、残念ながらそれに従ってくれない方もおられます。そして、中には盗伐をするようなやからも宮崎にもおりますので、そういうものも含めて、今後いかに再植林を進めて、再造林を進めて、循環型の林業をやるかということは大変大きな課題ですけれども、今回のこの森林組合法の改正がその一助となるということは御理解いただければありがたいというふうに考えております。


○田村(貴)委員 盗伐問題は、今度、いずれやりますけれども、大臣、やはり宮崎でも九州でも、こんなに刈っていいのかというところはいっぱいありますよね。こんな主伐、こんな皆伐をやっておって大丈夫かと。去年、おととしみたいな豪雨災害が来たらどうなるのか。そんなところはいっぱいありますよね。もう今が大切なので、直ちに手だてを打っていただきたいと思います。
最後に一問だけ。造林未済地の調査は、都道府県の受けとめもそれぞれまちまちで、数字が整合性がありません。ですから、無届け伐採の状況も含めてリアルに把握する必要があるんじゃないですか。
例えば、秋田県では、伐採後に自然更新、すなわち木が生えてくるかの判断をする基準を、国の五年以内ではなくて二年以内としているわけです。したがって、秋田県の基準では造林未済地が、二〇一七年度、五百六十九ヘクタールになる。しかし、国基準では八ヘクタールしかない。こういう矛盾が生じているわけなんですね。
こうした矛盾は、学識経験者もこれを見て判断できない。こうした委員会でもちゃんと論議ができない。県は県の言い分がある、国は国の言い分がある。もっとリアルに状況をつかむ必要があると思いますよ。
それから、自然更新、五年はちょっとないだろうと思いますけれども、いかがですか。リアルにつかむ必要で。


○本郷政府参考人 お答えを申し上げます。
造林未済地の面積につきましては、伐採後の人工造林を計画し二年以内の更新が完了していない人工林伐採跡地、伐採後の天然更新を計画し五年以内の更新が完了していない人工林伐採跡地などについて取りまとめたものでございまして、その把握に当たっては、市町村が現地を確認するなどにより調査しているところでございます。
県によって異なるという御指摘につきましては調査をさせていただきたいというふうに思いますけれども、私どもとしては、この基準に従って報告をいただいているものと認識しております。
なお、平成二十八年の森林法改正により、市町村が伐採後の造林の状況を効率的かつ的確に把握できるよう、伐採届を提出した森林所有者等がその後の状況を市町村長へ報告することを義務づけたところでございます。
今後は、市町村に対し順次行われる報告を活用しながら調査をお願いし、造林未済地面積についての精度向上を図ってまいりたいと考えております。
さらに、衛星画像を活用して伐採状況を確認するシステムの開発に取り組んでおり、昨年十一月から三道県で実証を始めているところでございまして、伐採箇所の発生を迅速に把握できるよう、実用化を早期に図ってまいりたいと考えております。


○田村(貴)委員 時間が参りました。終わりますけれども、状況はしっかりリアルにつかんでいただきたい、このことを要求したいと思います。
終わります。