190-衆-総務委員会 NHK予算 子会社の不祥事と放送法

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
 本来ならば、NHKの予算審議というのは、国民・視聴者の知る権利あるいは要望がこの予算に反映されているのか、そして公共放送としてのNHKの発展がここにうかがえるかどうか、こうしたものを審査していくというものであると考えます。
 しかし、その審議の入り口に立てないというのが今のNHKの状態ではないでしょうか。
 視聴者の不信を買った籾井会長の数々の言動に加え、この間、NHKが明らかにしただけでも、協会職員による窃盗事件、危険ドラッグ使用、タクシー乗車券不正使用、はたまた子会社におけるずさんな経理、横領、売り上げ水増し請求、架空請求、犯罪に至る事件と、不祥事が絶えることがない、まさに異常とも言える事態にあると考えます。
 中でも、社員二人が実体のない会社に架空の工事を発注して約二億円着服したNHKアイテックの問題は、非常に重大だと考えます。
事件の概要について、簡単でいいですから、説明をしていただきたいと思います。


○今井参考人 お答え申し上げます。
 今回のアイテックの問題は、長年にわたって不正が見過ごされた、内部統制上極めて重大な問題だと受けとめております。
発覚の経緯でございますが、東京国税局の税務調査の中で発覚したものでございまして、元社員二人が、去年十月までの六年間に、実体のない会社に工事や業務を架空に発注するなどの手口で、およそ二億円を不正に受領していたものでございます。
 アイテックにおきましては、工事の受注から支払いまでを管理するシステムを導入して、工程ごとに管理者がチェックすることになっておりましたけれども、実際には、管理者が証票類の確認をしないまま承認を繰り返し、必要な証票類が作成されないケースもございました。こうしたずさんな運用があったために、長年不正が見過ごされてしまったものというふうに承知をしております。
 アイテックでは、上司の処分にとどまらず、社長以下役員五人が辞任を申し出ております。また、アイテックを指導監督する立場のNHK本体も、社会的な責任があるとして、会長を初め執行部の全役員が報酬の一部の自主返納を決めたところでございます。
 現在、刑事告発に向けて準備をしているところでございます。
以上でございます。


○田村(貴)委員 複数の監査システムがあるにもかかわらず、なぜ不正を見抜けなかったんでしょうか。
 籾井会長直轄の関連団体ガバナンス調査委員会は、過去の子会社の不正事業をもとに立ち上げたものであり、その調査期間中にあるにもかかわらず、こういう不正が起こったんです。一体何を調査しておられたんでしょうか。御説明いただきたいと思います。


○今井参考人 御指摘のとおり、NHKアイテックに対しましては、この六年間に各種の監査や調査が行われておりました。結果として不正を見抜くことができなかったのは大変残念であるというふうに感じております。
 アイテックにおきましては、監査や調査に際して、チェックされる証票や資料を直前に作成するなどの妨害行為も行われていた例があるということが確認されております。
 こうしたこともあったとは思っておりますが、今回の不正を発見することができなかったのは、いずれにしましても、大変残念なことというふうに承知しております。


○田村(貴)委員 監査法人による会計監査がある、監査役監査がある、自社の経理監査がある、ISOに基づく内部品質監査もある、NHK内部監査室による監査もある、そして、関連団体ガバナンス調査委員会による調査、これだけあって、見抜けなかった。結果として、東京国税局の調査によって発覚をした。全くお粗末としか言いようがないと思います。
 私は、非営利の協会が営利企業の業務を監督する、そのこと自体に無理があるのではないかと常々考えているんですけれども、会長、いかがでしょうか。


○井上参考人 お答え申し上げます。
 NHKは、子会社など関連団体に対しまして、内部統制関係議決、そして関連団体運営基準に基づきまして指導監督を行っております。
 NHKは、今回の子会社、NHKアイテックの不祥事を受けて行いました構造的な原因の究明を踏まえまして、今月、関連団体運営基準を改正いたしました。今後NHKグループの経営改革に抜本的に取り組むための具体策を、ここで策定しております。
 この中では、指導監督機能の強化はもちろんですけれども、コンプライアンスの徹底、NHKグループの意識の醸成、そしてこのNHKグループの構造改革などに、既にできることから現在取り組んでいるところでございます。


○田村(貴)委員 アイテックの調査報告書を読ませていただきました。
 取締役の言葉として、次のような言葉があります。見ていたのは赤字かどうかであった、赤字の物件についてはしっかり見ていたが、赤字が出ないとそうでもなかった。また、ある管理職は、赤字になっていないから大丈夫だと思い、発注を承認したとあります。
 今、九百億円を超すグループ会社の利益剰余金があります。そして、協会への配当が二〇一五年度予定では二十六億円となっています。アイテックからは三億三千万円であります。いわば、子会社にもうけさせて、そして貢献をさせる構図となっています。
 リスクマネジメントに対する関心が離れていっているのではありませんか。それから、協会も含めて、営利主義に立ってきているのではありませんか。どう考えておられますか。


○井上参考人 お答え申し上げます。
 子会社からのNHKへの配当につきましては、財務面での健全性が高く、十分な財務上の余力があるかどうかを見きわめて求めております。配当を求めたために子会社が利益優先の体質になっているというふうなことはないと考えております。配当につきましては、今後も子会社の経営状況等を見ながら、その年度ごとに判断をしてまいります。
 それから、利益優先の体質がそういったリスクを見逃す温床になっていたのではないかというふうな御指摘をいただきました。
 実は、今回の中期計画、三カ年計画で、NHKグループ全体のコンテンツ力、制作力の強化などを掲げまして、NHKグループ全体でのより効率的な番組制作を最優先にしようということに加えまして、今回の事案を受けまして、先ほど申し上げましたコンプライアンスの徹底とか指導監督の機能の強化といったところも、今後、子会社の重要な施策として、NHK本体からの評価の基準の中心に据えたいというふうに考えております。


○田村(貴)委員 そうはいっても、監査がずぶずぶになっている、そして甘くなってきているということが今日の事態を招いているというふうにも思います。
 NHKは、何人からも干渉され、または規律されることがない、それは、受信料制度によって財政面からの自主性が保障されているからであります。しかし、ここにもかかわってくる問題ではないでしょうか。もうけ主義に走ったら、それは財政面での自主性、その土台も壊してしまうことにもなってしまいます。そのことを私は強く危惧するものであります。
 会長から御発言はありませんでした。残念です。
 高市総務大臣に伺います。
 NHKの子会社を含めての改革は、単に人事を刷新して役員を入れかえたり組織の体面を変えるだけでは、その改善は小手先のものになってしまうだろうと思います。
 大臣も、子会社改革についてはゼロベースという言葉を用いられて、そして意見を付されています。
やはり私は、非営利のNHK、協会が営利を目的とする企業を監督する、この矛盾が根底にあるというふうに考えます。この検証と対応策を出していかなければならないと思います。
 公共放送というのは、国民そして視聴者の理解と信頼の上に成り立っています。だから、何といっても今はNHK自身がみずからの責任において国民に説明責任を果たすこと、打開策を提示することが緊急に求められているというふうに考えるわけでありますけれども、総務大臣の御所見を伺いたいと思います。


○高市国務大臣 NHKは、放送法第二十九条第一項に基づき定められた内部統制議決によりまして、子会社の業務運営について指導監督を行う立場にあります。
 NHKは国民・視聴者の受信料によって運営されている公共放送でございますので、その業務を総理する立場にあられます籾井会長を先頭に、子会社も含めたグループ全体の経営改革、ガバナンス強化を早急に進めていただきたいと存じます。また、できるものから着手をしていただきたいと考えています。このことは、一月十二日に籾井会長がNHK予算提出のために大臣室に来られたときにも、私から申し上げました。
また、二十八年度NHK予算に付した大臣意見におきましても、NHKアイテックの横領事件を初め不祥事が後を絶たないという状況にあったことを踏まえまして、「子会社の業務範囲の適正化」「子会社における適正な経営及びコンプライアンスの確保」「協会と子会社との取引における透明性・適正性の確保」「子会社の利益剰余金の協会への適正な還元」の四つのポイントを挙げました。
 先ほど井上理事も答弁しておられましたが、三月八日には、NHK執行部において、関連団体運営基準の一部改正を行われたと聞いておりますし、また、三月八日の経営委員会でも、執行部に対しまして、しっかりとグループ経営改革の工程表を報告することや、グループ経営改革を着実に断行することなどを求められたということですので、籾井会長におかれましては、経営委員会からの指摘を真摯に受けとめながら、しっかりとその責務を果たしていただくということを期待します。
 また、三月十四日、籾井会長が国際放送の実施要請に係る通知交付式のために大臣室に来られた際にも、先ほど申し上げた四つのポイントのうち、二つ目については改革の方向性が示されたけれども、残る三つのポイントについても早急に具体的に進めていっていただきたい旨を申し上げました。


○田村(貴)委員 NHKにおいては、あるいは関連企業、関連会社においては、公共放送を担っているという自覚をいま一度持っていただいて、そして、国民への説明責任を果たしていただく、必要な意識改革、必要な経営改革を進めていただきたいと心からお願いしたいと思います。
 次の質問に入りたいと思います。
 総務大臣の放送事業者に対する資料の提出権限について伺っていきたいと思います。
 これまで、放送事業者に対する政府の権限を強めようとして、放送法の改正論議が何度かなされてまいりました。
 二〇〇七年、このときは自民党政府でありますけれども、放送法の改正案を提案されました。
 その一つは、捏造番組を流した放送局に対して、総務大臣が再発防止計画の提出要求ができる行政処分を新設するとしたものであります。しかし、与野党の修正協議によって、その部分は削除となりました。
 総務省にお伺いします。
 提案の趣旨、削除に至った理由について御説明いただけるでしょうか。


○今林政府参考人 お答え申し上げます。
 先生がお話しになりました放送法改正でございますが、平成十九年に発生をいたしました捏造番組の放送など、深刻な問題への対応として、視聴者保護を図る観点から、番組編集の自由に配慮した必要最小限の措置として、放送事業者に対しまして再発防止計画の提出を求め、大臣意見を付して公表する制度を導入する放送法の改正案を、平成十九年四月、第百六十六回国会に提出させていただきました。
 その後、NHK及び民放連におかれましては、自主的にBPOを設立され、その設立したBPOにおいて、捏造の疑いのある番組に対して、放送倫理上の問題を調査、審理し、勧告または見解を出し、必要に応じて再発防止策の提出を求める新たな取り組みを五月に開始されたところでございます。
 BPOは、放送事業者による自主的、自律的取り組みの一環として行われているものでございまして、放送法に位置づけられた組織ではございませんけれども、このようなBPOの新たな取り組みの運用状況も踏まえまして、同年十二月、再発防止計画の提出の求めに係る規定を削除した修正法案が衆議院総務委員会において提出されまして、同月、可決、成立したと承知しております。


○田村(貴)委員 二〇一〇年、これは民主党政権時代でありますけれども、このときにも放送法の改正案が提出されました。
 その中で、電波監理審議会の機能を強化し、放送の不偏不党など放送法の根幹部分について、審議会がみずから審議して総務省に建議できるようにしたという案でありました。これも結局削除となりました。
 この点についても、提案の趣旨、削除に至った経過、理由について説明をしていただけますか。


○今林政府参考人 お答え申し上げます。
 平成二十二年三月、第百七十四回国会に提出を申し上げました法案で追加することとしておりました電波監理審議会の建議の規定は、無線による放送のみならず、有線による放送についても審議、答申する機能を担いまして、放送行政に関する知見が蓄積されることとなる電波監理審議会に、放送行政のあり方について大所高所から総務大臣に御建議いただく機能を負わせようとしたものでございます。
 こうした規定は、放送行政のあり方をチェックしていただく上で有益と考えておりましたけれども、このような規定の追加も、国民の皆様の御理解があって初めて成り立つものでございます。
 平成二十二年十月、第百七十六回国会への再提出に当たりましては、さきの通常国会での衆議院の御審議の中で、電波監理審議会の機能強化が国による番組への介入の隠れみのになるのではないか、あるいは、法案提出前に十分な議論がされていなかったのではないか、こういった御指摘を踏まえまして、当該規定を削除する修正が行われたことから、これを削除したものでございます。


○田村(貴)委員 そういう懸念がいろいろ出されて削除に至ったということであります。結局、政府の権限を強めようとしてもそれはできなかった、やめようということになったのであります。それは、自民党政権下でも民主党政権下でも一緒でありました。
 こうした流れを見てくると、歴史の中で、放送法というものは、放送の自由を尊重する立場から極めて謙抑的に運用されてきたというふうに私は理解をしているんですけれども、総務省、いかがでしょうか。


○今林政府参考人 大臣から何度もお答え申し上げておりますとおり、放送法につきましては、総務省は抑制的に運用してきたということだということで、御指摘のとおりと考えております。
 放送法では、表現の自由を保障する観点から、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」といたしまして、放送番組編集の自由を規定した上で、放送事業者の自主自律により、放送番組の適正を図る仕組みとなってございます。
 したがいまして、放送番組は、放送事業者がみずからの責任において編集するものでございまして、放送事業者が自主的、自律的に放送法を遵守していただくものと理解してございます。


○田村(貴)委員 そこで、番組編集に関する国の判断、権限について伺いたいと思います。
 放送法第四条では、「放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。」として、四つの項目を記しています。「一 公安及び善良な風俗を害しないこと。」「二 政治的に公平であること。」「三 報道は事実をまげないですること。」「四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」
 もしこの番組編成の準則に照らして疑義が生じたと総務大臣が判断したときに、当然、番組制作における事実確認等が必要になってまいります。審査の過程で、放送局からの報告や資料の提出が不可避になってくると考えます。
 では、資料の提出にかかわる放送法の規定はどうなっているでしょうか。
 放送法百七十五条、総務大臣は、政令の定めるところにより、放送事業者に対しその業務に関して資料の提出を求めることができる。その政令とは、放送法施行令第七条で定められているところであります。
 そこで、伺います。
 放送法百七十五条と同法施行令七条によって、総務大臣は放送事業者にどういう資料の提出を求めることができるのか、条項に即して説明をしていただきたいと思います。


○今林政府参考人 お答え申し上げます。
 放送法第百七十五条と放送法施行令第七条の関係につきましては、先生ただいまお話しになったとおりでございまして、放送法第百七十五条が、総務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令の定めるところにより、その業務に関し資料の提出を求めることができると規定してございます。
 また、総務大臣が放送事業者に対して資料の提出を求めることができる事項は、放送法施行令第七条の各号に限定列挙されているところでございます。具体的に申しますと、放送番組関連では、同条第一号イ、ロ及びハということでそれぞれに掲げる事項、つまり、番組基準等に関する事項、放送番組審議機関に関する事項、訂正、取り消し放送に関する事項ということでございます。
 したがって、総務大臣は、これら列挙されたもののみについて資料の提出を求めることができるということでございます。


○田村(貴)委員 そうすると、その資料の中で、放送番組、番組編成の準則にかかわるという点については、番組審議会あるいは訂正放送に関するところの資料というふうに捉えることができるんですけれども、それでよろしいでしょうか。


○今林政府参考人 お答え申し上げます。
 前回の答弁で若干御説明不足の点がございまして、申しわけございませんでした。
 今先生がおっしゃいましたように、放送事業者が、例えば、仮に放送法第四条の規定に抵触して報道を行ったとして、放送事業者自身が真実でない事項の放送をしたと認識し、訂正放送を行った場合には、その訂正放送を行った事実について資料が提出されることになります。
 同様に、事実を曲げた放送につきましては、当該放送事業者の番組審議機関で議論がなされていた場合には、その議事概要が放送法第百七十五条の規定に基づく求めに応えて提出されることになります。
 このように、放送法第百七十五条の規定によりまして、放送事業者自身による自律的な検証の結果作成される資料が総務大臣に提出されることとなります。
 ただ、こういった放送法施行令第七条各号に掲げる事項を超えて、総務大臣が放送法第百七十五条の規定に基づきまして同法第四条の規定の抵触がないかを調査するための資料の提出を求めることはないということでございます。


○田村(貴)委員 よくわかりました。
 そうすると、ある番組があって、それが四条の四項目に照らして疑義があった、放送事業者がそれを検証するといったときに、一つは、番組審議会とかで審議する、あるいは放送の訂正を行うといったところであります。
 それは、いずれにしても放送事業者が自主的そして自律的な検証を行った上で、行った後での資料ということになりますけれども、そういうことでよろしいでしょうか。


○今林政府参考人 お答え申し上げます。
 先生の御指摘のとおりでございます。番組審議会に関する資料や訂正放送に関する資料は、放送事業者さん自身による自律的な検証の結果作成することとなる資料でございます。


○田村(貴)委員 政治的公平性の適合性の判断については、これまでは、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断することとされてきました。しかし、この間論議していますように、高市総務大臣は昨年五月の参議院総務委員会で、補充的な説明とした上で、一つの番組のみでも第四条の政治的公平性を確保されているとは認められない場合があるとされたわけであります。
 しかし、たとえ総務大臣が、どの政権であっても総務大臣が放送準則に照らして幾ら問題ありと認識しても、今議論してきましたように、検証のしようがないわけなんですね。なぜなら、番組編集における資料を提出させる権限が放送法で定められていない、与えられていない、このことが明らかになりました。
 挙証責任を果たしようにも果たせない、法律はそうなっているわけであります。それをあえて判断するとするならば、極めて主観的な判断になっていくわけであります。このことははっきり申し上げておきたいと思います。
 表現、言論の自由にかかわる放送行政の規制というのは、政府から独立した規制機関が行うのが世界の常識であります。総務大臣の監督ではなく、新たに放送委員会、独立行政委員会を設置して放送行政を規律するように、制度改正を我が党としては求めたいと思います。
 今国会で何度も求めてまいりましたけれども、高市総務大臣の一つの番組のみであってもの発言と、政府統一見解の撤回を重ねて要求して、きょうの質問を終えたいと思います。
 終わります。