193-衆-本会議 税制改定 「大企業栄え民細る」 田村議員が告発

○田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、地方財政計画、地方税法改正案、地方交付税法等改正案について関係大臣に質問します。(拍手)

 
 まず、地方自治にとって看過できないのは、沖縄の米軍基地問題です。
 米軍オスプレイの墜落という重大事故が起こりました。政府は、事故原因が解明されていないにもかかわらず、飛行再開を容認しました。住民の安全よりも米軍を優先する姿勢であります。その上、日米首脳会談では、唯一の解決策として、辺野古への新基地建設を合意したのであります。
 沖縄県民がたび重なる選挙で示した民意を踏みにじり、政府みずから地方自治を否定するものではありませんか。総務大臣の答弁を求めます。

 
 安倍内閣が地方創生の名で行っていることは一体何か。それは、医療、介護、子育てなどの社会保障や生活に欠かせないインフラ、行政サービスを大幅に削減して切り出し、それを市場に投げ与え、成長戦略に結びつけようということです。このもとで、地方に循環すべき利益は、一層大企業の本社がある東京圏などに吸い上げられています。これでは、地域の主役は住民ではなく、企業ではありませんか。
 国民の命と最低限の生活を保障する国の責任を投げ捨て、社会保障のナショナルミニマムを放棄するものです。地方自治体に行政サービスの削減と職員の非正規化を強いるやり方は、直ちにやめるべきであります。
 来年度の地方財政計画では、まち・ひと・しごと創生事業費一兆円のうち、六千億円に当たる人口減少等特別対策事業費の配分を、成果を上げた自治体に段階的にシフトするとしています。地方交付税制度をねじ曲げ、国の政策誘導に動員することは許されません。
 以下、具体的に質問します。

 
 第一は、社会保障サービスの削減です。
 二〇一八年度から国民健康保険が都道府県単位化され、地域医療ビジョンによる医療体制の適正化と医療費の削減が迫られます。市町村国保は、国民皆保険制度の基盤の役割を果たしてきました。その役割と努力がなくなることがあってはなりません。厚労大臣の見解を求めます。
 都道府県が決めた納付水準が目標とされ、市町村が徴収強化に走らざるを得なくなれば、納税者の権利を踏みにじった徴収が際限なく広がりかねません。都道府県に差し押さえや滞納処分を競わせるようなことはあってはなりません。厚労大臣、総務大臣の答弁を求めます。
 医療体制と医療費の確保を都道府県の自己責任に委ねれば、都道府県が賄い切れない部分を企業に開放することにつながるのではありませんか。

 
 第二は、行政のアウトソーシングです。
 安倍内閣は、人口二十万人以上の地方自治体が社会資本や公共施設を整備、運営する場合に、PPP、PFIを優先的に採用することを打ち出しています。
 愛知県西尾市は、合併を機にPFI方式による大規模な公共施設等の統合と再配置事業を打ち出しています。多数の施設の解体、新設、維持管理、運営を特別目的会社一社が百九十八億円もの総事業費で行うものです。
 事業計画は、事業者の所有物との理由で十分に公開されていません。住民合意がないままに、七小中学校の学校のプールの廃止と民間温水プールへの統合、学校給食センターにおける仕出し弁当事業の検討などが進められています。
 PPP、PFI事業では、住民合意は保障されないのではありませんか。
 PPP、PFIの推進は、住民を無視した一方的なまちづくりを各地に広げるものではありませんか。
 また、水道事業の広域化計画が問題になっています。
 香川県の計画では、県下五十五施設の自己水源のうち、二十九施設の廃止が前提となっています。自己水源の廃止は、災害時のリスクとなるのは明白です。なぜこのような計画を進めるのですか。
 さらに、政府は、水道事業の運営を民間に委ねるコンセッション方式の導入を推進しています。広域化計画は、結局、水道事業の民営化を進めるものではありませんか。
 ところが、民営化を進めてきた欧州諸国では、水道料金の高騰などの問題が多発し、むしろ再公営化の動きが強まっているではありませんか。
 今やるべきことは、インフラに対する老朽化対策です。水道を初めとする都市インフラの老朽化対策をどう考えているんですか。何をやろうとしているのか、政府の見解を求めます。

 
 第三は、自治体職員の削減と非正規化です。
 自民党政権が推進する自治体業務の民営化路線のもとで、自治体職員は一貫して削減されてきています。とりわけ、集中改革プランによる地方公務員の削減は、自治体の力を大きく後退させたのであります。
 いまだに、東日本大震災からの復興に必要な職員は、被災自治体の希望を満たしておらず、熊本の被災自治体からは、何度要求しても応援職員が来てくれないという訴えが絶えません。自民党政権によって押しつけられた地方行革と職員削減が、震災時の被災者支援、復興復旧に深刻な傷跡を残している認識はありますか。
 自治体消防を強化する。正規職員の配置、増員を基本にして、行政各分野の体制強化に取り組むための財政措置を直ちに拡充すべきであります。答弁を求めます。
 社会保障サービスの削減やインフラ整備のアウトソーシングを進めれば、一層の職員削減と非正規化を広げることになるのではありませんか。とりわけ、インフラの維持管理にかかわる技術職員の削減路線は直ちに改め、職員の大幅な増員配置へと転換すべきであります。

 
 最後に、震災対策です。
 東日本大震災や熊本地震を初め、多くの被災者が苦しみの中にいます。被災者生活再建支援法の改善、一部損壊への支援の創設、災害関連死を防ぐための支援策の充実などをどう進めていくのですか。
 災害から国民の命と財産を守ることは、国と地方自治体の重要な責務です。被災者の生活となりわいの再建、被災地の復興に求められる施策を、被災者の実態に応えて発展拡充すべきであります。
 安倍内閣が地方自治の本旨にのっとり、団体自治と住民自治を尊重し、発展させることを強く求めて、質問を終わります。(拍手)


 

〔国務大臣高市早苗君登壇〕

○国務大臣(高市早苗君) 田村議員から私には、まず、沖縄の米軍基地問題についてお尋ねがございました。

 国と地方公共団体の意見が対立する場合は、地方自治法を初めとする各種法令の規定に沿って解決が図られているものと認識しており、政府みずからが地方自治を踏みにじるという御指摘は当たらないと考えております。

 次に、地方自治体の行政サービスの削減と職員の非正規化についてお尋ねがありました。
 各地方公共団体は、厳しい財政状況にあっても、ICTの徹底的な活用や民間委託等の推進などによる業務改革を進め、簡素で効率的な行政体制を実現していくことが必要でございます。
 多様化する行政サービスとさまざまな働き方へのニーズを踏まえれば、多様な勤務形態の職員を適切に活用しながら、質の高い公共サービスを効果的、効率的に提供していくことが重要です。

 
 次に、人口減少等特別対策事業費についてお尋ねがありました。
 地方交付税の人口減少等特別対策事業費では、地方団体が自主的、主体的に地方創生に取り組むための財政需要を算定しています。人口減少対策等に積極的に取り組み、成果を上げた団体では、全国標準以上の経費が生じていると考えられることから、取り組みの成果を反映しているものであり、適切な算定であると考えています。

 
 次に、国民健康保険税における差し押さえ等についてお尋ねがありました。
 国民健康保険税を含めた地方税の滞納処分については、滞納者の方々の個別具体的な実情を十分に把握した上で、地方税法の規定を踏まえて適切に行われるべきであり、その旨地方団体にも要請をいたしております。

 
 次に、PPP、PFIについてお尋ねがございました。
 PPP、PFIは、関係法令の規定に基づき、住民の皆様の御理解や議会の議決など必要な手続を経て進められるものです。住民を無視した一方的なまちづくりを各地に広げるものという御指摘は当たりません。

 
 次に、水道事業などの老朽化対策についてお尋ねがありました。
 総務省は、水道事業等について、必要な財政措置を講じつつ、広域化や民間活用などの抜本的な改革の検討や経営戦略の策定を推進し、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を図っています。引き続き、関係省庁と連携しながら、老朽化対策を支援してまいります。

 
 次に、地方行革、職員削減による被災地の復旧復興への影響などについてお尋ねがありました。
 総務省は、これまでも、被災自治体における派遣のニーズを丁寧にお伺いしながら、必要な職員の確保に努めてまいりました。地方団体の職員数が全体としては減少となる中で、復旧復興に必要な土木職員等は、近年増加傾向にございます。
 今後も、引き続き、全国の地方団体に職員の派遣を積極的に働きかけるなど、人的支援の確保に努め、被災地の復旧復興を支援してまいります。
 消防職員につきましても、多様化、複雑化する災害に的確に対応するため、各団体において必要な人員の確保を行っており、増加傾向にあります。
 なお、標準的な業務に必要な職員給与費については、適切に財政措置を講じております。

 
 そして、社会保障サービスの削減などに伴う職員削減と非正規化についてもお尋ねがございました。
 地方公共団体においては、行政改革の取り組みなどにより総職員数を抑制する一方、福祉事務所、児童相談所などの職員や防災対策に携わる職員の数を増加させています。
 各地方公共団体においては、地域の実情や行政需要の変化に応じ、めり張りのある人員配置を行い、社会保障を初めとする行政サービスの確保を図っていただいていると考えております。

 
 地方の技術職員の定員についてもお尋ねがございました。
 土木技師、建築技師などの技術職員については、近年増加傾向にございます。
 先ほど申し上げましたとおり、地域の実情、行政需要の変化に応じて、めり張りのある人員配置を行って、効率的で質の高い行政の実現に向け、適正な定員管理の推進に取り組むことが重要であると考えております。(拍手)


 

〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

○国務大臣(塩崎恭久君) 田村貴昭議員にお答えを申し上げます。
 国民健康保険改革等についてお尋ねがございました。
 国保改革は、厳しい財政状況にある国保制度につきまして、財政基盤の強化を図ること、そして、財政運営の責任主体を都道府県に移行することにより、高額医療費の発生など、多様なリスクの都道府県全体での分散を可能とすることとしておりますが、市町村には引き続き、資格管理、保険給付、賦課徴収等の役割を担っていただくこととしており、住民に身近な主体として、都道府県とともに、国民皆保険を支える基盤としての役割を果たしていただくものと認識をしております。
 また、平成三十年度以降も市町村が保険料を集めることとなりますが、保険料を滞納されている方にはさまざまな事情を抱えておられる方々もおられることから、引き続き、市町村に対し、それぞれの事情をよく相談いただき、きめ細かな対応を行うよう求めてまいりたいと考えております。
 なお、国として、都道府県による医療提供体制の整備につきましては、地域医療介護総合確保基金等による支援を行っているほか、国保財政については、平成三十年度以降、毎年約三千四百億円の追加的な財政支援等を行うこととしており、医療体制と医療費の確保を都道府県の自己責任に委ねているとの御指摘は当たらないものと考えております。

 
 水道事業についてのお尋ねがございました。
 近年、施設の老朽化や人口減少に伴う料金収入の減少等の課題に直面をしており、水道事業の基盤強化が喫緊の課題となっております。
 このため、水道事業者による事業収支の見通しの作成など、施設の計画的な更新を進めるとともに、災害時のリスクを踏まえ、都道府県が主体となって広域連携を進める仕組みや、コンセッション方式の導入などを内容とした水道法の改正案を今国会に提出することとしております。
 コンセッション方式の導入につきましては、安易な民間委託として住民の不安を招かないよう、市町村が最終的な責任を負うとの原則を維持しながら、市町村が料金の範囲をあらかじめ条例で定めるとともに、市町村と国において民間事業者に対する監視、監督を行うなど、適切な事業運営を確保してまいります。(拍手)


 

〔国務大臣石原伸晃君登壇〕

○国務大臣(石原伸晃君) 田村議員の御質問にお答えいたします。
 PFI事業における住民合意についてのお尋ねがございました。
 PPP、PFIとは、公共施設等の整備、運営に当たりまして、民間の資金や創意工夫を活用することにより、公的負担の抑制を図りつつ、効率的かつ効果的な公共サービスを実現するものでございます。
 地方公共団体は、PFI法に基づき、一定規模以上の公共施設を整備するPFI事業を実施する場合には、あらかじめ議会の議決を経る必要がございます。このため、PFI事業の個々の案件については、住民の理解、議会の議決等必要な手続を経て進められるものと承知をしているところでございます。

 
 水道事業の広域化とコンセッション方式の導入についてお尋ねがございました。
 水道利用人口の減少や施設の老朽化が進む中で、安定的な経営を確保し、効率的な整備、管理を実施するためには、地域の実情に応じて事業の広域化を行うことが重要でございます。また、公共施設の運営を幅広く民間に委ねるコンセッション方式を推進することによりまして、新技術の採用や料金の設定など、民間の創意工夫を活用することも重要でございます。
 このため、全閣僚により構成されておりますPFI推進会議において昨年の五月に決定したPPP/PFI推進アクションプランでは、水道をコンセッション事業推進の重点分野の一つに位置づけているところでございます。
 内閣府としては、今後とも関係省庁と連携しながら、PPP、PFIを推進してまいりたいと考えております。(拍手)


 

〔国務大臣松本純君登壇〕

○国務大臣(松本純君) 田村議員より、震災対策について御質問をいただきました。
 被災者の一日も早い生活となりわいの再建に向けて、政府一丸となって取り組んでまいります。
 被災者生活再建支援制度は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた方々の生活の再建を支援することを目的としており、全壊や大規模半壊等の甚大な被害があった世帯を対象としております。
 このような制度の被災者生活再建支援金の支援対象の拡大については、東日本大震災を初め、過去の災害の被災者との公平性、他の制度とのバランス、国や都道府県の財政負担などを勘案して、慎重に検討すべきものと考えます。
 また、被害程度の小さい一部損壊の被害を受けた方に対しては、独立行政法人住宅金融支援機構の災害復興住宅融資等の支援があり、地方自治体によっては、地域や災害の実情、財政事情などに応じて独自の支援措置を実施されているところです。
 今後とも、被災者の生活支援が速やかに行われるよう、また、過去の災害における知見などを生かし、災害が直接的な原因となる以外で亡くなる方が一人でも少なくなるよう、今後とも、政府、自治体、関係者がしっかり連携して取り組んでまいります。(拍手)