198-衆-農林水産委員会-9号 2019年5月8日 日米貿易交渉 畜産業に重大な被害

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

日米自由貿易協定について質問します。
先月二十六日、日米首脳会談が行われました。トランプ大統領は、この交渉の中で、日本は非常に巨額の関税を農産品に課していると批判しました。そして、その関税を撤廃したいと要求したのであります。
きょう、この議論、ずっと続いているんですけれども、この発言は非常に重大だと思いますよ。日本の農産物の関税を撤廃したいとアメリカの大統領が言ったんです。
吉川大臣、率直に受けとめを聞きたいというふうに質問通告していたんですけれども、既にもう答弁があっています。昨年九月の共同声明、これを大前提に最大限努力すると。
去年の共同声明は、それはそれとして、直近の、今のアメリカの大統領は日本の農産物の関税を撤廃したいと言っている。これはやはり大ごとじゃないでしょうか。安倍首相は何と答えたんでしょうか。そういうことも安倍首相にお聞きになったんでしょうか。吉川大臣、いかがでしょうか。


○吉川国務大臣 この日米物品貿易協定交渉につきましては、昨年九月の日米共同声明において、農林水産品については過去の経済連携協定で約束した内容が最大限との日本の立場が日米首脳間で文書で確認をされております。今般の日米首脳会談におきましても、TPPを上回る譲許を求めるという話は出なかったものと私は承知をいたしております。
いずれにいたしましても、農林水産大臣としての私の責務でありますが、この日米共同声明を大前提にいたしまして、将来にわたって我が国の農林水産業の再生産を可能とする国境措置を確保することでございまして、このために最大限の努力をしていく考えでもございます。


○田村(貴)委員 いやいや、トランプ大統領のその発言というのは、TPPと同等かそれ以上の関税の引下げと市場の開放が念頭にあるわけですよ。農務長官もそう言っているじゃないですか。
トランプさんは、農産品について、非常に力強く議論することになると強調しています。五月中に妥結可能かとの記者団の問いに、相当迅速に進めると思う、訪日の際に合意文書に署名するかもしれないと、ここまで踏み切っているわけですよね。これは世界じゅうに発信されていますよ。報道されていますよ。これもまた重大な意味を持つ発言だというふうに思います。
大臣、これはやはり危機感を持つべきだというふうに思います。日本の農業と国民の食料にかかわることなのに、何が話し合われて、何を決めようとしているのか、通常国会をやっていますけれども、何にも私たちわからない、伝わってこない。情報が示されず、国会での審議もできない。国民的議論がないままに結論だけを押しつけられたら、これは生産者、国民は納得できる話ではないと思いますけれども、この状況はどうなんでしょうか。大臣、いかがですか。


○吉川国務大臣 日米の物品貿易協定につきましては、四月の茂木大臣及びライトハイザー通商代表との会合におきまして交渉が開始をされたところでございますけれども、その内容につきましては、内閣官房のTPP等政府対策本部から公表されているところと承知をいたしておりますが、交渉にかかわる情報開示についてでありますけれども、内閣官房TPP等政府対策本部が担当しているところでもございますが、農林水産省といたしましても、農林漁業者の方々の不安をしっかりと受けとめ、可能な限り説明に努めていく考えでもございます。


○田村(貴)委員 そうした安倍政権の弱腰とも見える姿勢に、やはり生産者は納得していないというふうに思うわけであります。厳しい目を向けていますよ。
日本農業新聞の農政モニター、これは四月二十五日まとめでありますけれども、安倍内閣の農業政策を評価しない、六八・五%。多数を占めています。政府の食料自給率向上への取組を評価しない、七三・八%にも上っています。
言うべきことはちゃんと言わないといけない、アメリカに対してきっぱりと物を言える外交交渉をしなければだめだというふうに考えます。
パーデュー米農務長官は、四月九日、TPPと同じかそれを上回ることを望んでいると述べました。十一日には、農産品をめぐる暫定合意を早期に結ぶことを望むと述べました。日米貿易協定交渉で農産物の交渉を先行させるよう求めたのであります。
アメリカがTPPを脱退して、日米貿易交渉において、関税撤廃、そしてTPP以上といった発言が今飛び交っているわけであります。日本に譲歩を迫ってきているわけであります。
この期に及んで、アメリカがTPPに戻ってくる、そんな可能性があると本当に、本気で考えておられるんでしょうか。TPP12が発効する見込みはもうどこにもありません。TPP11の六条による見直し協議を提起すべきではありませんか。いかがですか。


○横山政府参考人 お答え申し上げます。
今の委員の御指摘は、もうアメリカがTPP12に戻ってくる可能性がないんじゃないかということで、TPP11の六条による見直し協議を提起すべきではないかということであったと思います。
TPP協定の第六条につきましては、TPP12協定の効力発生が差し迫っている場合又はTPP12協定が効力を生ずる見込みがない場合には、締約国の要請に基づき協定の見直しを行う、このように規定をしてございます。
現時点でTPP11協定の六条で規定するTPP12協定が効力を生ずる見込みがない場合に該当するか否かについては、内閣官房TPP等政府対策本部から答弁すべき事項であると理解しております。


○田村(貴)委員 従来と一緒の答弁なんですけれども、そういう事態では今ないということを私は今申し上げてきたところであります。日本の農業、大ピンチではありませんか。
メガ貿易協定の相次ぐ発効に伴って、農産物の輸入拡大に懸念の声が広がっています。そして、セーフガードの議論も頻繁に行われているところであります。
お伺いしますけれども、そもそもセーフガードというのは何の目的のためにある制度なんでしょうか。教えてください。


○横山政府参考人 御指摘のセーフガードでございます。いわゆるセーフガード措置につきましては、さまざまな種類のものがございます。
今、どういう目的かという御質問がございました。そういう意味で、一番明確に協定上も書かれておりますのは、WTO協定、ガット第十九条、WTOセーフガード協定に基づく一般セーフガードでございまして、その中では、調査の結果、輸入の増加により国内産業に重大な損害を与え又は与えるおそれがあると認められる場合において、重大な損害を防止し又は救済することを目的として関税率の引上げや数量制限などの措置を講ずるもの、このように規定されております。
また、このほか、個別の経済連携協定におきまして、個々の品目についてセーフガードが設けられている場合がございます。こうした品目につきましては、特定の輸入基準数量を超えた場合に自動的に関税を引き上げるといったものでございます。


○田村(貴)委員 わかりました。
そのセーフガードについて質問しますけれども、牛肉の輸入量が増加しています。資料を配付していますけれども、二〇一七年度の牛肉の輸入量は五十七万一千六百六十四トンであります。二〇一八年度は六十一万九千七百五十三トン、一〇八%の上昇を見たところです。このうち冷凍肉は、三十万一千四百三十八トンが三十四万七百六トンへ一一三%増加しています。報道もいっぱい行われました。
WTOルールで、ウルグアイ・ラウンドで導入された関税緊急措置の発動基準数量、これは幾らなのか教えてください。そして、あと何トン冷凍牛肉がふえていたら発動基準に達していたのか、この数字を教えてください。


○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
平成三十年度の第四・四半期の、今御指摘ございました冷凍牛肉の発動基準数量が三十五万二千六百八十三トンでございました。冷凍牛肉の輸入量は三十四万七百六トンでございましたので、発動基準数量を一万一千九百七十七トン下回っている状況でございます。


○田村(貴)委員 あと一万一千九百七十七トンで発動されていたというふうな状況まで輸入量が増加しているわけなんですよね。セーフガード基準に迫る勢いで冷凍牛肉が日本に入ってきているということです。
昨年十二月にTPPが発効し、関税が下がって、カナダやニュージーランドなどの冷凍牛肉が一月、急激に拡大しました。もしセーフガードを発動したら、TPP参加国でないアメリカには五〇%の関税をかけなければならない、そこで、アメリカなどに情報を提供して、年度末に向けて輸入を抑制した。この数字の表からも読み取れるんですけれども、冷凍牛肉を抑制してきたと数字の上からも読み取れるところであります。
しかし、このセーフガードの基準に基づくと一一七%なんですよね。一一七%を超えないように輸入調整をしていけば、二〇一八年度のように毎年輸入量が上がっていくことになるんじゃないんですか。既に、この二〇一八年度の六十一万九千七百五十三トンというのは、表の下にある、TPPの二〇一九年度の六十万を超えている、この基準を超えている、こういう状況になっているわけなんです。
国内畜産業には重大な損害が出てくるのではないか、一一七%を超えないように調整すれば確実に上がっていくわけですから。こういう方向でいいんですか。畜産に大きな影響を与えていくんじゃありませんか。いかがですか。


○枝元政府参考人 お答え申し上げます。
先生、今二つのことをおっしゃったというふうに思ってございます。
一つは、まず、関税緊急措置につきましては、対前年度実績の一一七%ということでございまして、当然、前年の方の輸入量がふえますと発動基準数量もふえますし、減りますと減るということで、例えば、二〇一七年度は減って、二〇一八年度は基準数量が上がっている、それは、その年々の輸入の状況で決まってまいります。
また、二〇一八年度の牛肉輸入量は六十一万九千七百五十三トンということで、御指摘のとおり、対前年同期比一〇八%でございます。これは、近年の国内の好景気等を背景といたしまして、焼き肉、ハンバーガー等の外食産業を中心として牛肉の需要が拡大していることによるものでございます。
一方で、国内の牛肉生産量でございますけれども、近年、三十三万トン前後で推移してございますが、二〇一八年度は三十三万二千八百五十七トンということで、対前年同期比一〇一%ということではございますけれども、やや増加しておりまして、また、国産の卸売価格も堅調に推移してございますので、現時点におきまして国内農業に重大な損害が出ている状況にはないというふうに考えてございます。
農林省といたしましては、堅調な牛肉需要に応えまして国産牛肉の生産を拡大していくことが重要と考えておりまして、畜産クラスター事業等々によりまして国内の生産基盤の強化を図ってまいりたいと存じます。


○田村(貴)委員 いやいや、これから重大な影響が、損害が起きるのではないですかと聞いているわけですよ。
TPP発効以降、EPAの後、スーパーに行ったら、もうすごいセールですよ。TPP発効記念セール、それから日欧EPA記念セール、こういうことをいっぱいやっているわけですよね。そして、もう国産牛肉を席巻する勢いでディスプレーされているじゃないですか。
現に、肉用牛の飼養農家戸数は毎年三千戸から四千戸のペースで減っている。重大なのは、もう太刀打ちできないな、もうこれから畜産をやってもしようがないな、こういう諦め感を植え付けては絶対だめだと言うんですけれども、もう際限のない自由貿易、経済連携協定で関税が下がってきたら、この傾向は更に深まる、私はそういうふうに思います。
そういうことから、やはりFTA、アメリカとの交渉は、これはもうやめる、日本に対して農産品の関税を撤廃まで、そこまで言い出した以上は、直ちに日米貿易交渉は打ち切るべきだというふうに思います。それから、日本の経済、食料主権を守って、公正で公平な貿易ルール、これをつくることが政府の使命だということを主張して、きょうの質問を終わります。
ありがとうございました。