200-衆-農林水産委員会-6号 令和元年11月12日 自動車関税でごまかし 日米貿易協定

○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

先週七日に行われました連合審査で、私は、政府が日米貿易協定で提出した日米貿易協定の概要の説明の記述について取り上げました。引き続き、きょう質問します。
資料を配付しております。自動車と自動車部品の関税を説明する記述が二つ存在しています。左側の文書は、日米貿易交渉が最終合意に至った九月二十六日に外務省が示した文書であります。右側の文書は、協定署名後の十月十八日に私たちに届けられた文書であります。
左側は「米国譲許表に「更なる交渉による関税撤廃」と明記。」と書いてありますけれども、右側は「米国附属書に「関税の撤廃に関して更に交渉」と明記。」、このように書きかえられているわけであります。
確認をします。自動車と自動車部品について、本協定案の米国譲許表に、さらなる交渉により関税撤廃と明記されているのですか。事実を教えてください。


○神田大臣政務官 お答えいたします。
自動車・自動車部品については、米国の附属書に、関税の撤廃に関して更に交渉すると明記されております。
さらなる交渉による関税撤廃との説明は、九月二十五日の日米首脳会談における最終合意の確認に際して、茂木大臣からその趣旨を簡潔に述べたものでありまして、関税の撤廃に関して更に交渉すると内容的には同じものでございます。


○田村(貴)委員 それは全然説明になっていませんよ。文書はこれですよ。譲許表はこれですよね。英文で書かれている表ですよ、百二十ページから百二十九ページ。ここの中に、政府が説明した日米貿易協定、さらなる交渉による関税撤廃と明記、明記と書いてあるんですよ。明記されているかされていないかだけ、答えてください。政務官。


○大角政府参考人 お答え申し上げます。
九月二十五日の日米首脳会談における最終合意に際しまして、米国譲許表にさらなる交渉による関税撤廃と明記との説明をいたしましたのは、この時点では署名の前で、協定の構成を含め、まだ条文が固まっていない状況でございましたが、米国の譲許内容について記載する箇所に、さらなる交渉による関税撤廃との趣旨が明記されることで合意したことを簡潔に申し上げたものでございます。
その後、協定の署名を行い条文が確定し、日米貿易協定に関する説明書を国会に提出したことを踏まえ、米国附属書に関税の撤廃に関して更に交渉と明記と内容を改めたものでございます。


○田村(貴)委員 ちょっと、時間潰ししないでくださいよ。
この表に、政府が説明したさらなる交渉による関税撤廃と明記って書いてあるんですよ、説明書に。明記しているかしていないかということを聞いているんですよ。ちゃんと答えてください。
答えなかったら、ちょっと審議をとめてもらえますか。これ、審議にならないじゃないですか。


○神田大臣政務官 同じ回答になりますが、趣旨が明記されたことで合意したことを簡潔に申し上げたものでございます。


○田村(貴)委員 私、この譲許表に関税撤廃が明記って政府の説明文書にあるから、どこに明記されているんですかと聞いているんですよ。イエスかノーかだけなんですよ。
きのう、私、朝から晩までずっとこのことを聞いてきているんですよ、教えてくださいと。確たる答えはなかったけれども、お一人答えていただきました、表にはありませんと。そういうことですね。違うんですか。表にないですね。関税撤廃と明記はないですね。オートモービル、オートパーツ、言葉としてないでしょう。だから、ないということでしょう。違うんですか。審議にならぬですよ、ちゃんと答えてもらわぬと。この表ですよ、この表。


○大角政府参考人 今委員おっしゃいましたタリフスケジュール・オブ・ザ・ユナイテッドステーツ、この表には、自動車・自動車部品に関する記載はございません。


○田村(貴)委員 やっと認めた。
この米国の譲許表に、さらなる交渉による関税撤廃という部分はないんです。ないにもかかわらず、最終合意があった後、私たち国会に対して、国民に対して出された政府の説明文書には、さらなる交渉による関税撤廃と明記と書いたわけなんですよ。それが事実と違うから変えたんでしょう。右側にあるように、関税撤廃に関して更に交渉と。これ、文言が全然違うわけですよ。
じゃ、何でこういう書きかえになったかというところをちゃんと審議しないと、本協定案の真相に迫ることができないということであります。
まあ、言ってみれば、うその記述があったということです。これは重大なことですよ。譲許表というのは、タリフスケジュール、どの品目について関税を撤廃あるいは削減していくかの取決めです、スケジュールです。ここに載ると載らないでは大違いなんですよね、約束事ですから。載っていないというのは、つまり、具体化していないということですよ。
では、なぜ載っていないものを載ったかのように説明しようとしたのか、質問します。
連合審査で、内閣府の澁谷統括官は、まだ条文が固まっていない状況だから合意された趣旨を簡潔に書いたと。今おっしゃったとおりですけれども。その合意された趣旨というのは、当時、日本政府側は譲許表に明記するという認識だったのか。その当時の認識ですよ、譲許表に明記するという認識だったのですか。そのことについてお答えください。


○神田大臣政務官 お答えいたします。
今委員お尋ねのこの譲許表ですが、趣旨のみを記載したものでございまして、その後、十月十五日にアップデートを行っております。この附属書というのは関税の撤廃に関して更に交渉という表記になっておりますが、これは、条文が固まったことによってアップデートしたものであります。
おっしゃるところの修正ですが、協定の署名を行いまして、条文が今申し上げたように確定し、日米貿易協定に関する説明書を国会に提出したことを踏まえて、米国附属書に関税の撤廃に関して更に交渉と明記と内容を改めたものであり、時系列に伴う修正と考えております。
なお、通常、既にホームページで公表した資料については、修正を行った旨を周知することはしておりません。


○田村(貴)委員 私が聞いているのは、これは一番大事なところですよ。合意されて、ではその協定は一体何だったのかということで一番最初に国民や国会に示されたのが、日米貿易協定に関する概要となる文書だったんですよ。この文書にもう明確に書かれているわけですよ。米国譲許表にさらなる交渉による関税撤廃と明記、明記と書いているわけですよ。
自動車の関税撤廃というのは、日本側の最大的な要求でしょう。それから、日米貿易協定の、誰もが見守っている最大の焦点じゃないですか。ここの意思形成過程というのは物すごく大事なんですよ。
なぜ、譲許表に撤廃を明記、そういう意思が働いたのか。そのときはなぜそう思ったのか。そのことを聞いているんですよ。経過はいいです。
もう一度言います。当時、譲許表に明記するという認識だったんですか。これだけ答えてください。


○大角政府参考人 九月の二十五日の日米首脳会談における最終合意の確認に際しての説明におきまして米国譲許表との言葉を用いましたのは、米国の譲許内容について記載する箇所という趣旨で述べたものでございます。
その後、協定の署名を行って条文が確定し、日米貿易協定に関する説明書を公開したことを踏まえ、その確定した条文に即し、米国附属書に関税撤廃に関して更に交渉と明記と内容を改めたものでございます。


○田村(貴)委員 ちゃんと語ってくださいね。ここが一番大事なところなんですよ。
日本国側、日本側が譲許表に明記という認識だったんでしょう。そういう思いで迫っておったんでしょう。それを、変わった。変わったのはなぜか。これはすなわち、アメリカ側から譲許表に明記することを拒否されたんじゃないんですか。どうなんですか。


○神田大臣政務官 お答えいたします。
自動車と自動車部品の関税については、協定本文及び附属書2によってその取扱いを規定しております。
まず、協定本文の第五条一項において、各締約国は附属書1又は附属書2の規定に従って市場アクセスを改善すると両締約国の義務を規定した上で、それぞれの締約国の附属書において、市場アクセスの具体的な改善の仕方を記載しております。
そして、米国の附属書には、自動車・自動車部品について、関税の撤廃に関して更に交渉すると書かれておりまして、これが、米国が第五条一の規定に基づいて市場アクセスの改善を行う具体的なやり方となります。
このように、自動車・自動車部品については、関税撤廃がなされることを前提に、市場アクセスの改善策として、その具体的な撤廃期間等について今後交渉が行われることになります。


○田村(貴)委員 今後交渉が行われることになるというのは、譲許表の前のページの七番に書かれているわけですよ。譲許表に書いて関税撤廃が約束されたのではないんですよ。
正確なのは、自動車と自動車部品の関税撤廃に関しては将来の交渉次第と英文にもそう書いているじゃないですか。これは全然違う話なんですよ。
だから、ウイン・ウインなどと言って安倍総理がおっしゃるけれども、これはウイン・ウインになっていないんですよ。そのことを私たちは、経過を含めて説明していただきたいと言っているんです。
日本の農産物だけ一方的に輸入を迫られた、一方的に日本が譲歩を迫られたんじゃないんですか。この譲許表の問題というのはそれを端的にあらわしているというように思います。
初めから、譲許表に明記と、私たち国会や国民をまさか欺く、そういうお考えはなかったと思うんですよ。そうすればうそをつくことになるから、こんな大事な時点で。
だけれども、譲許表に明記というふうにしてそれが変わったのであれば、それはなぜ変わったのか。アメリカ側から、それは困ります、譲許表には載せないと。あるいは撤回を迫られたんじゃないかと言ったんだけれども、何を言っても答えない。
だから、その当時からの、トランプ大統領と安倍総理の交渉記録、ライトハイザー氏とそれから茂木大臣の交渉記録を開示してください、そうじゃないとわからないじゃないですかと言っているんですよ。
委員長、連合審査でも野党の方から出しています。この米国側の主張も含めて、経緯を文書に、委員会に提出いただくように理事会で取り計らっていただきたいと思います。


○吉野委員長 理事会で検討します。


○田村(貴)委員 これを出していただかないと、この協定案は認められませんよ。だってウイン・ウインじゃないんですから。不利益をこうむるような協定案は絶対に認められません。
江藤大臣、時間がないんですけれども、自動車に関しては米国の譲許表には記載されていません。一方、農産物については、日本の農産物の輸入については、この譲許表に事細かく、もう分量が全然違います。たくさん書かれています。一方で、自動車の関税撤廃については文書で確約はされていません。今後の交渉次第と。
これでどうしてウイン・ウインと言えるのでしょうか。お考えを聞かせてください。


○江藤国務大臣 お答えさせていただきます。
ウイン・ウインかどうかについては私から明確には申し上げませんが、しかし、この間、連合審査でもほかの先生から御質問をいただきましたけれども、じゃ、日本は負けたのかと、この交渉の場において。我々はルーザーというふうには思っておりません。
交渉でありますから、農林水産については、足立議員だったと思いますけれども、米国に感謝すべきじゃないかなんていう御指摘もありましたが、しかし、そういうことではなくて、やはり、SGを設けたにしても、米を除外したにしても、やはり日本の農業には影響があるということは認めなければなりませんし、しかし、その一方、六万五千五トンへのアクセスやそれから四十二品目については、関税撤廃なり関税の引下げについても合意をしておりますから、農産品でもとれるところはとったということでございます。


○田村(貴)委員 政府が国会や国民に対して説明した文書が、これが誤りであったということがきょう明らかになりました。そのことの訂正の説明もなければホームページに記載もないというのは、これはもうゆゆしき問題ですよ。
強力な再交渉規定が盛り込まれていますよね。そして、この協定の中では、米国は将来の交渉において、農産品に関する特恵的な待遇を追求する、ここまで書かれているわけですよ。
今後、お米や砂糖、バター、脱脂粉乳、牛肉の輸入、月齢制限の撤廃、防カビ剤の表示撤廃、食品添加物、残留農薬基準の緩和など、こうした項目が対象になってくるんじゃないですか。今までのような一方的に譲歩するような交渉をやっているんだったら、こうしたところまで俎上にのせられて、それがまた一方的に迫られる結果になるんじゃないですか。
そうした懸念があるから、この交渉はだめだ、こういう協定は認められないと私は確信するものであります。
時間が来ました。きょうは以上で終わります。ありがとうございました。